水からの伝言をささやいてくる“水商売”にはご注意ください!【波動水編】


雪の結晶

怪しい“水商売”の王様といえば、なんといっても波動水です。後発の怪しい“水商売”は、ほぼ波動水の考え方を継承しています。波動水は、怪しい“水商売”のグローバル・スタンダードです。当然、インチキ度は「上」です。

波動水の提唱者は江本勝氏。『水からの伝言』という写真集で、一躍有名になりました。「ありがとう」や「平和」という文字を見せた水の結晶はきれいな形になり、「ばかやろう」や「死ね」や「戦争」などという文字を見せた水の結晶はいびつな形になった・・・という実験結果を掲載した写真集は大ヒット。小学校の道徳の授業にも用いられるようになりました(現在は取りやめになっています)。

しかし、その実験結果の解釈に致命的な誤りがありました。確かにこの写真集には、きれいな結晶の写真がたくさん掲載されています。しかし、このきれいな結晶は、見せられた文字とは関係なくできていることが明らかになったのです。

『水からの伝言』の写真は、「文字を見せた水」の結晶ではない

雪の結晶がきれいなことはご存じでしょう。そう、この写真集に掲載されているのは、雪の結晶だったです。

「いや、写真集では確かに、文字を見せた水を凍らせて、顕微鏡で結晶の写真を撮ったと説明されている。まさかおまえは、この説明自体がウソで、実はまったく関係のない雪を持ってきて写真を撮ったというのか!」

そうお怒りになるお方がいると思います。ぼくはそこまで言っていません。実験自体にはうそはないと思います。でも、撮られた写真は雪の結晶なのです。

写真集で説明されている結晶の写真撮影の方法は、下記のとおりです。

・50枚のシャーレに、「文字を見せた水」を数滴落とす。
・シャーレを-20℃の冷凍庫で2時間凍らせる。
・室温-5℃ の実験室で、顕微鏡写真を撮影する。
・うまく結晶が撮影できるのは、50サンプルのうち数個。

水の結晶に関する科学的知識がある者には、上の方法を見ただけで、「あの写真は雪の結晶だ」と分かるのです。

水の結晶は、2つの方法でしか成長しません。1つ目は、液体中に結晶ができて成長する方法。これが「氷」です。2つ目は、空気中に結晶ができて成長する方法。こちらは気相成長といい、「雪」ができます。

氷の結晶はいびつです。六角形や樹枝状の美しい形になるのは雪の結晶です。しかも、結晶化するときの温度が-15℃くらいのときに限られます。それ以外の温度では、気相成長でもいびつな形となります。

つまり、こうです。-20℃の冷凍庫から出された氷が、撮影するために顕微鏡に置かれます。このとき、氷が置かれた付近の空気が、室温の-5℃ から-20℃に向かって冷えていきます。その際、空気中に含まれていた水分が冷えていき、-15℃あたりで結晶になったのです。

ただし、ちょうど-15℃あたりで結晶化するのは「運次第」ですから、50サンプルのうち数個しか撮影できなかったのでしょう。

ですから、撮影された結晶は「空気中の水」の結晶なのです! 「ありがとう」とか「死ね」などの「文字を見せた水」の結晶ではないのです。文字など見せてもいない、文字と相互作用をしたこともない、実験室の空気中に含まれていた水分の結晶なのです。

ベストセラーにもなったので、言葉と結晶の形との因果関係を多くの人が信じていると思いますが、それは誤りです。夢を壊すようで申し訳ありませんが、やはり科学的な事実はしっかりと認識しておかねばならないと思います。

「波動ビジネス」の宣伝パンフレットに過ぎなかった

科学者たちからの批判が激しくなる中、ついに江本氏がマスコミの取材に応じました。少し長いですが、AERA2005年12月5日号に掲載された江本氏のコメントを全文転載します。

水からの伝言はポエムだと思う。科学だとは思っていない。僕は科学者ではない。単なるロマン的なこと、ファンタジー。宗教と紙一重なので、誤解いただくこともあるが、宗教家ではない。少年のまま大きくなった普通の人間。ただ、科学でわかっていることはほんの数%、95%はわからない。今後、周りの研究者によって科学的に証明されていくと思う。

結晶の撮影は本来は温度や湿度のコントロールができた部屋でやるべきでしょうが、中小企業なので限界がある。ネガフィルムなので、改竄はない。ご要望があれば公開したいが、科学者からは無視され、インチキと言われている。撮影者には、こういうことをした水だという情報を与えている。水は心の鏡だという。撮影者の意識が働いてきれいなものになるということはある。それは別に非科学的ではないと思う。量子力学の世界ではそうなっているようだ。内容を知らせていなくても、良い言葉では良い結晶が多い、そのへんは謎だ。

思いついたきっかけは、水を使って健康相談に応じていたら、すごいことが次から次に起きたからだ。水が情報を運びうるんだ、その情報は微細な振動だと自分なりに推理した。それが波動だった。とても大事なことなのに誰も信じてくれない。あるいは理解できない。それで、僕のような素人がたまたま手をつけた。

波動の理論は、僕の中での常識。著書に書いた「108の元素が108の煩悩に対応している」ことも常識だ。常識を発表していけないことはない。

1999年に琵琶湖に350人が集まって祈る運動では成果を収めた。それ以来、琵琶湖はきれいになった。

祈りでハリケーンを消すことができるか? 出来ると思うが、人数がいっぱい必用でそう簡単に出来ない。そのためにも世界を講演して歩いています。

初めに、「水からの伝言はポエムだと思う」、「科学だとは思っていない」、「単なるロマン的なこと、ファンタジー」と自ら語られています。正直で良いと思います。問題は、そう思っていながらも「今後、周りの研究者によって科学的に証明されていくと思う」と、科学であることにこだわっている点です。

現時点で江本氏の主張が「科学ではない」ことは、自分も認めているし、他の科学者も認めています。だったら、科学ではないことをはっきりと謳って、商売をするべきです。科学に疎い人は、「水からの伝言」を科学的に証明された事実だと信じてしまいます。

単なる「ポエム写真集」の販売ならば、まだ許せます。しかし、江本氏の商売は写真集だけではないのです。波動水などの「波動ビジネス」を大々的に展開しているわけです。つまり、写真集は「波動ビジネス」の宣伝パンフレットみたいなものだったのです。

コメントの中で量子力学を引き合いに出していますが、江本氏の言う「常識」と量子力学とは無関係です。「108の元素が108の煩悩に対応している」とは、おもしろい観点だと思いますが、科学的ではありません。何しろ、元素の数のデータが古すぎます。上記のコメントが出された2005年時点で、元素は115種類発見されていました。

宗教に対する冒涜であると同時に、科学に対する冒涜でもある

江本氏の会社のwebサイトでは、波動について、次のように説明していました。既にサイトは閉鎖されていますが、ここに誰かが保存したものが残っていました。

私たち人間を含め、世の中の万物は振動していることをご存じですか? 量子力学という最先端の物理学により物質の根源が分子-原子から、さらに小さい「素粒子」というものであることが説き明かされつつあります。原子や素粒子は微弱ながら絶えず振動しています。

その振動を「波動」と呼び、全ての物質や世の中の現象はこの波動に始まっているといえます。そして、米国の科学者ロナルド・J・ウェィンストック博士の開発したMRA(共鳴磁場分析器)によって、私たちの目には見えない波動の測定と修正が可能となりました。

わたしたち人間も、その他すべての物質も根源は波動であることが分かってくると、波動の科学は健康をも含めて全産業への応用が可能となっていきます。

「科学だとは思っていない」と言っていながら、思いっきり科学的な装いをした説明になっています。あまり感心できません。

量子力学でいう波動は、江本氏が言うようなものではありません。江本氏の波動の概念は量子力学のそれではなく、古典物理学の波動です。量子力学の波動は、原子や素粒子が振動していることを示していません。実体もないし、媒体もない波動です。ある粒子の存在確率の分布を表している波動です。

実体も媒体もないのですから、どんな装置を用いても量子力学の波動は検知できません。それを測定してしまうというMRAとは、どんな装置なのでしょうか?  説明によれば、「あらゆるものが固有の波動を持っているので、その波動の共鳴周波数を調べ、どんな病気でも探り当ててしまう」というものだそうです。

まずMRAで被験者の波動を測定します。すると、被験者の病気が分かります。その病気に有効な波動を、MRAを用いて水にプリント(転写)して「波動水」を作り、その波動水を飲用させることで病気を治す・・・というビジネスを、江本氏は行なってきました。これが、AERAの取材に答えて語っていた「水を使って健康相談に応じていた」ということです。

調査のため、このMRAを分解して調べた製造業者は、「MRAは掌の皮膚表面の電気抵抗を計る装置にすぎない」と報告しました。つまり、うそ発見器だったのです。量子力学の波動はもとより、古典物理学の波動も検出していないのです。電気抵抗を計っていただけです。ましてや、水に波動をプリントできるはずがありません。

波動水には、何もプリントされていません。ただの水道水です。

ぼくも科学者の端くれですが、物質に人間の心が通じることもあるかもしれないと思っています。つまり、水に「ありがとう」と心から感謝の言葉をかければ、なにがしかの影響を与える可能性は否定しません。しかし、それはまだ科学で実証されていない事柄です。性急に結論を出してはならないと思います。しかも、今の科学で説明がついてしまう「きれいな水の結晶化(雪)」という現象を、まったく新しい説を用いて語る場合には、とても慎重にしなければなりません。

江本氏は「宗教と紙一重なので、誤解いただくこともあるが」と述べていますが、「水からの伝言」や「波動水」は宗教そのものであって、科学ではありません。信じることは自由ですし、そのことに対してぼくは批判しません。ただ、明らかに宗教であるにもかかわらず、科学的なものであるかのように装って商売をしてしまうことは批判します。それは、宗教に対する冒涜であると同時に、科学に対する冒涜でもあると思うからです。


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  1. ピンバック: いまだに信じる人が絶えない疑似科学のホメオパシー – ∂世界/∂x = 感動

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