科学者も間違うことを知らない“水商売”にはご注意ください!【水のクラスター編】


ブドウ

健康に良い水を売る“水商売”の人が、しばしば言う宣伝文句に「クラスターが小さい水」というものがあります。これを言う人はインチキ商売人ですから、近寄らないようにしましょう。

クラスターとは「房」や「集団」や「群れ」などという意味です。水の分子がブドウの房のように集まっているというイメージから、「水のクラスター」といわれています。実際には、ブドウのようにずっと同じ塊になっているわけではなく、1ピコ秒(10のマイナス12乗秒)の単位で分子の集まりが生まれたり消えたりしています。

某大手企業の科学者M氏が(本人の学者生命を考え、本名は伏せます)、核磁気共鳴装置(NMR)という測定器を用いて、さまざまな水のクラスターを調べました。その結果を日本化学会で発表しました。彼はそこで、「クラスターが小さい水は健康に良い」と断言したのです。アルメニア共和国にある長寿村の水は、クラスターが小さかったからでした。

水は細胞に取り込まれるときに細胞膜を通ります。細胞膜には、たいへん小さな孔があり、水はその孔を通っていきます。クラスターが小さい水は、クラスターが大きな水よりも孔を通りやすいので、速く細胞に吸収されます。だから身体にとって良いという説明です。

先端技術の粋を集めて作られたNMRという分析機を用い、ちゃんとした科学者が研究し、科学者が集まる学会で発表したこの内容は、マスコミが大きく報道しました。何らかの科学的な説明を欲していた“水商売”の人々はM氏の説に飛びつき、自分たち商品の効能を説明する根拠として用いるようになりました。

ところが、その後M氏の説が完全に間違っていることを、法政大学工学部の大河内正一教授らが明らかにしました。詳しく説明すると、科学用語や原子論の説明などから始めなければなりません。長くなるし、おもしろくないでしょうから、用語や理論の説明は割愛します。分からなくても読み進めてください。ポイントが分かれば良いと思います。

最大の誤りは、NMRから読み取られた「水の吸収スペクトルの半値幅」を、M氏が「クラスターの大きさ」だと思ってしまったことです。「水の吸収スペクトルの半値幅」はクラスターの大きさではなく、水の回転運動とプロトン(陽子)の交換速度の総合的な情報を表す数値だったのです。

つまり、M氏は分析機の使い方を間違っていたわけです。致命的なミスです。「クラスターが小さい水は健康に良い」という説の前提となる「クラスターの大きさ」が、まったく関係のない数値で示されていたのです。

水のクラスターというものの実態は、今でもよく分かっていません。水分子自体が小さいですし、極めて短い時間で誕生と消滅を繰り返しているので、なかなか解明できないのです。

このように、科学者が学会で発表したからといって、その内容が科学的に認められたわけでないのです。他の多くの科学者からの検証にパスしてこそ、初めて科学的だと認められるのです。STAP細胞騒動を思い出せばよく分かるでしょう。

“水商売”の人から、「うちの商品はクラスターが小さい水だから、健康に良いですよ」と言われたら、その商品説明はインチキです。お気をつけください。ただし、あくまでも商品説明がインチキであって、商品自体がインチキであるかどうかは別問題です。


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