ネーミングだけが独り歩きする“水商売”にはご注意ください!【πウォーター編】


桜

インチキ度は「上」ですが、心情的には「中」にしてあげたいのが、π(パイ)ウォーターです。

πウォーターが提唱されたのは、1964年です。当時、名古屋大学農学部の助手であった山下昭治氏が、「植物の芽が花になるまでの現象は、遺伝情報だけによるのではなく、水の特別な状態が関係しているのではないか」という仮説を提唱したのです。

進化論の主流である総合進化説(ダーウィン進化論の系統)では、生物は遺伝情報のみで形作られると考えてきました。極端な例では、リチャード・ドーキンスの「利己的遺伝子」という理論のように、生物は「自己複製を目的とする遺伝子に利用されている乗り物に過ぎない」という考え方まであります。つまり主役は遺伝子のほうであって、生物は脇役だというわけです。

そういう思想が支配する中で、「植物が成長するための情報伝達に水が関係しているのではないか」という発想をしたことは、慧眼だったと思います。なぜなら、今日の進化論では、「生物を形作る情報は、環境からが80%、DNAからが20%」というのが常識だからです。山下氏の説は、一定の評価ができるものです。

πウォーター仮説は次のようなものです。

「生命を支えている情報は、二価三価鉄塩を微量に含んだ水によって維持されている。これを『水のπ化状態』と呼ぶことにする」

鉄の化合物には、鉄が二価のものと三価のものがあります。二価三価鉄塩とは、その両方が複合した化合物です。これが水の中に微量に存在することで、生命が支えられているというわけです。

残念ながら、この説はいまだに実証されていません。それなのに、πウォーターというネーミングだけが独り歩きし、なぜか「πウォーターを作る浄水器」が販売されるようになりました。

提唱者である当の山下氏は1992年、「このような現状をどう思うか」という取材に対し、次のように答えています。

「私の理論の実用化には、長くて地道な実験と検証の繰り返しが必要であると思います。πウォーターに含まれる二価三価鉄塩は、現在の技術では測れないレベルです。検証の結果、効果の再現性の認められる方法や製品ならば喜んで推奨したいと思いますが、私が作ったものでもないし、技術指導したものでもない製品については全く責任が持てません。πウォーターを人工的に作ろうとしても、効果を発揮させる製造技術がまだありません。いま出回っているπウォーター製品の効果は、大いに疑問です。」(ジャーナリスト・大朏博善氏への回答文書より)

ぼくは個人的に、山下氏のπウォーター仮説はおもしろいと思います。しかし、いまだにその仮説は実証されていないのに、πウォーター製造器が販売されていることは、インチキ以外の何ものでもありません。πウォーター仮説の提唱者も、それらの製造器を認めていないわけです。

販売されている製造器の仕組みを見てみると、普通の浄水器やアルカリイオン整水器と基本的には同じです。健康に害はないでしょう。

中には、「セラミックにπウォーターの情報を移し、そのセラミックに水を触れさせてπウォーターにする」というような製品もありますが、これなどは完全なインチキでしょう。セラミックが情報を記憶するということなど、あり得ません。山下氏の言うπウォーターは、二価三価鉄塩が微量に含まれた水です。どう考えても、セラミックから二価三価鉄塩が生み出されることはありません。


ネーミングだけが独り歩きする“水商売”にはご注意ください!【πウォーター編】” へのコメントが 2 点あります

  1. πウォーターは汚れた池を浄化する・・・・とか30年前くらいに聞いた
    記憶がありますが・・・・このような事実があるとは知りませんでし
    た。今回は「水商売」への警鐘が続きますが、何か「事件」があった
    のですか?

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