PCR検査の数を増やすと、かえって感染が広がる恐れがある



来年の東京オリンピックは、世間に中止の雰囲気を醸成する流れが起き始めてきました。4月28日に日本医師会の横倉義武会長が次のように述べています。

1年後の東京五輪、日本医師会会長「ワクチン開発されないと難しいのでは」

日本医師会の横倉義武会長は28日、日本外国特派員協会で記者会見し、新型コロナウイルスの感染拡大で1年延期された東京五輪・パラリンピックについて、「有効なワクチンが開発されないと、開催するのは難しいのではないか」との考えを明らかにした。

「治療薬、ワクチンの開発を急いでほしい。日本だけが良くなっても、世界的に感染が拡大している状況であれば、(五輪開催は)難しいと理解している」とも述べた。

薬というものは、そう簡単にできるものではありません。

Q33 1つのくすりを開発するのに、どれくらいの年月がかかりますか。

A 1つのくすりを開発する期間は、9~17年といわれています。研究対象となったほとんどの候補物質は、途中の段階で開発が断念されるほど、くすりの開発を成功させるのはたいへん難しいことなのです。

それはそうです。薬といえば聞こえはいいですが、要は毒です。毒(薬)をもって毒(病気)を制するのです。ですから、薬には必ず副作用が伴います。それを慎重に見極めながら、「これならば何とかいいだろう」ということでOKを出すわけです。

ですから、上記サイトに出ているように、基礎研究(2~3年)、非臨床試験(3~5年)、臨床試験(3~7年)、承認申請と審査(1~2年)という長い過程が必要なのです。ぶっちゃけ、横倉義武会長の発言は「医学的には、来年の東京オリンピック開催は無理」と言っているのと同じです。

アビガンとレムデシビルという薬が、今回の新型コロナウイルスに使えるのではないかともいわれています。これらの薬はもともと新型コロナウイルス用に開発されてきたものではないため、既に上記の臨床試験の最終段階に来ているので、来年のオリンピック開催前にぎりぎり間に合うかもしれません。

ただし、専門家は楽観視していません。双方とも副作用が結構きついためです。

裏を返すと、この2つの薬が期間内にできなければ、来年の東京オリンピック開催は難しいでしょう。

再度の延期もないようです。

東京五輪、「再延期はない」 森会長が言明

来年に延期された東京オリンピック(五輪)・パラリンピックについて、大会組織委員会の森喜朗会長は、2021年に開催されなければ「中止になる」との考えを明らかにした。

オリンピックにはたくさんの投資(経済的・人的)がされているので、慎重な判断にはなるのでしょうが、科学的知見をベースに早めの方向転換をするべきだと思います。混乱しているときこそ、科学的な冷静な判断が必要です。

正しく「陽性」と検出できないケースも多い

科学的に考えていないなあと思う最近の風潮がもう一つあります。PCR検査をもっとどんどんやるべきだという論調です。なるべく多くの人を検査して、感染している人を早く見つけるべきだという理屈です。

これは科学を妄信している考えです。つまりPCR検査は100%確実に感染の有無を判定するという思い込みです。

むろん、PCR検査をしたら絶対に確実に感染の有無が分かるのであれば、どんどん検査するべきです。しかし現状はそうではありません。

ある検査で、病気を持っている人を正しく「陽性」と検出できる確率を感度といいます。PCR検査の感度は30~70%といわれています。

また、病気を持っていない人を正しく「陰性」と検出できる確率を特異度といいます。PCR検査の特異度は分かっていませんが、通常100%ということはあり得ません。

また、こういう統計を扱うときには、事前確率というものも重要になります。事前確率とは、例えば今回の場合、PCR検査を行う人たちの中で実際には何%の人が新型コロナウイルスに感染しているのかというものです。

事前確率が高いほど、つまり検査を行う人の中で感染者が多いほど、実際に検査をしたときの陽性・陰性の的中率は上がります。逆に事前確率が低いほど、陽性・陰性の的中率は下がります。

仮に、感度は現状いわれている最高値の70%、特異度はものすごく甘く見積もって99%、事前確率は1%(100人の1人が感染者という割合)として、実際に感染していた人が正しく「陽性」だと判断される確率を計算してみると、

(0.01×0.99)÷(0.01×0.7+0.99×0.01)≒0.56

約56%です。つまり、約半数しか正しく「陽性」だと判断されないのです。

ちなみに、事前確率を0.1%(1000人に1人)にして同じ計算をすると、約9.3%になります。つまり、100人の陽性患者がいても9人しか正しく「陽性」だと判断されないのです。

実際には事前確率は分かりません。ですから、むやみやたらに大人数の検査をすることは危険です。事前確率が下がってしまうので、検査の的中率も下がってしまうのです。

事前確率を上げるということは、要は「この人はコロナウイルスに感染しているかもしれないな」という人にターゲットを絞って検査するということです。ですから現在は、症状が出た人たちを検査しているのです。

症状が出ていないのに「心配だから」という理由だけでどんどん検査を増やしていくと、的中率が下がってしまって、結局、本当は感染していたのにもかかわらず「陰性」と判断され、安心して街中を歩き、ウイルスをばらまくということになるのです。

これは高校程度の確率計算だと思うのですが、「検査を増やせ! 増やせ!」とわめいているマスコミの人たちは、高校時代、真面目に数学を勉強していなかったのでしょうか。(-_-;)

<追記>
きょう(5/2)、本記事を補完するニュースが報じられたので、追記で紹介します。

症状あるのに…5回目で初めて「陽性」 PCR検査、見極め難しく

新型コロナウイルス感染症のため、神戸市立医療センター中央市民病院(神戸市中央区)に3月に入院した70代の男性患者が、5回目のPCR検査で初めて「陽性」反応が出ていたことが分かった。症状があるのに、4回の「陰性」を経て感染が確認された格好。同市保健所は「PCR検査は万能ではない」と感染を見極める難しさを指摘する。
(中略)
神戸市の伊地智昭浩・保健所担当局長は院内感染を発表した会見で、「PCR検査は限界がある」として慎重な評価が必要との見方を示した。厚生労働省の現行基準では、2度陰性が続けば感染者の管理から外れるというが、同病院の木原康樹院長は「検査だけでは感染の有無を明確にできない。ただ、(陰性でも)疑いがある患者を扱い続けるのも、受け入れ態勢に制限がある」ともどかしさを口にする。
(中略)
また、地域で医療に携わる医師らでつくる「日本プライマリ・ケア連合学会」は新型コロナ感染症に関する手引で、PCR検査の結果について、感染者が陽性と判定されるのは30~70%程度と紹介し、感染者の見逃しに言及する。同学会は「陰性の結果に安心して外出するなど、検査件数が増加すれば感染が見逃される感染者も増加し、リスクも高まる」と警鐘を鳴らしている。

(参考)
新型コロナウイルス騒動は東京オリンピック開催に対する最後の警告か
新型コロナウイルスで、地球はどうしても人類を減らしたいのだろうか?
この期に及んで、まだ東京オリンピックを開催しようというのか


“PCR検査の数を増やすと、かえって感染が広がる恐れがある” への2件の返信

  1. ピンバック: アフターコロナで大都市は壊滅する – ∂世界/∂x = 感動

  2. ピンバック: コロナワクチンの大量輸入は大丈夫か? – ∂世界/∂x = 感動

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

*