環境ホルモン狂騒曲


青空と緑
今から18年前の1998年、新語・流行語大賞トップテンに選ばれた言葉に、「環境ホルモン」があります。当時は「環境ホルモンによって人類が絶滅する」とまで言われ、社会全体が一種のパニック状態になるほど恐れられました。

環境ホルモンとは、「人工的につくられ環境に放出された物質で、体内に取り込まれると性ホルモンのような働きをするもの」です。より詳しくは「女性ホルモンと似た働きをしたり、男性ホルモンの働きを阻害する物質」だと考えられました。つまり環境ホルモンとは、「動物を女性化する物質」だというわけです。

いくつもの物質が環境ホルモンの疑いをかけられました。その中にはプラスチックに含まれる物質もあり、学校給食でプラスチック製の食器を廃棄する自治体までありました。ほ乳瓶をガラス製に替える家もたくさんありました。まさにパニックです。

しかし最近では、環境ホルモンなんて、ほとんど話題になりません。どうしたのでしょうか?

実は、環境省が2000年から2005年にかけて、疑われた65種類の物質を丹念に調査したのです。その結果は、2005年3月「ExTEND 2005」として報告されました。

この報告書によれば、メダカについては「3種類の物質で内分泌かく乱作用が強く推察された」と報告されましたが、人間を含むほ乳類については「全種類の物質で明らかな内分泌かく乱作用は認められなかった」と結論付けられています。

要は、環境ホルモンの脅威なんて存在しないと考えた方が妥当なのです。むろん、メダカについては影響があるのですから、絶対にないとは言えません。しかし、ほ乳類よりも下等な動物界では、緊急事態に性が変わることが知られています。メダカに内分泌かく乱作用が起きたことが、環境ホルモンの影響なのか、本来もっている性転換能力の発動なのかは、不明です。

この報告書では、次のようにまとめています。

「専門家に広く受け入れられるに至っていない研究成果の一部があたかも仮説を証明する根拠のごとく扱われることがある。(中略)『相反する結論があること』自体も伝わっていない場合があり、特に仮説を否定する研究結果については情報が伝わりにくい。」

「科学への批判力が育っていない幼い段階での教育では偏った情報の刷り込みになるおそれがある(中略) 。産官学から信頼性の高い情報が、伝え方のツール等とともに提供されることが望ましい。」

この調査結果を報道したメディアは、ごくごく少数でした。1998年の流行語になったときと比べたら、なんとも地味な扱いでした。これがメディアのやり方です。人々を怖がらせることには力を注ぎますが、安心させることには手を抜きます。メディアを鵜呑みにすることだけは避けましょう。

地球温暖化も18年後には忘れ去られていたりして…。(^_^;


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