カインの妻の謎 ~遺伝子が語る近親結婚の秘密~



『旧約聖書』の『創世記』では、アダム(男)とイブ(女)を人類始祖とし、その子どもとしてカイン(長男)とアベル(次男)を登場させています。そして、『創世記』4章17節には、カインの妻が登場します。ぼくのような科学好き兼宗教好きの人間は、この記述に首をかしげるのです。

なぜなら、アダム・イブが人類始祖である限り、カインの妻もアダム・イブの子どものはずです。つまり、彼女はカインの「実の姉妹」になります。

『旧約聖書』を経典とするユダヤ教、キリスト教、イスラム教は、近親結婚を禁じています。神がそれを許していないからという理由です。それでは、なぜカインだけにそれが許されたのでしょうか。特に各宗教を信仰している人に聞いたわけでもないですが、ぼくなりの推理で、なぜ神がそれを許したのか考えました。(ちなみに、アベルは独身のときにカインに殺されたので結婚していません)。

人間の遺伝子は約3万2,000個あり、それぞれの役割を担っています。さらに遺伝子は、染色体というグループを形成しています。染色体はヒモ状の分子で、人間には46本あり、これが23対のペアを組んでいます。

現代の人間の3万2,000個ある遺伝子の中で、十数個は必ず傷ついています。これは複製を繰り返す遺伝子の宿命であり、避けることができません。ところが染色体はペアで存在するため、片方の遺伝子が傷ついていても、他方の遺伝子がカバーするのです。もし神がいるのならば、その創造の素晴らしさに感動します。もし神がおらず、これが全くの偶然の産物なのであれば、それはそれで宝くじ1等に当たったような感動を覚えます。

人間の生殖も、同様に巧妙な仕組みになっています。精巣と卵巣の中では、もともと46本ある染色体を半分の23本減らして、精子と卵子に植え付けられます。受精したときに、細胞に必要な46本となるためです。ですから、子どもは両親から半分ずつ遺伝子を受け継ぐわけです。ある部分は父に似て、ある部分は母に似るのはこのためです。

さて、親の傷ついた遺伝子を子どもが受け継ぐ確率は、父から1/2、母から1/2です。従って、きょうだいが4人いれば、2人は父(または母)から同じ「欠陥遺伝子」を受け継いでいることになります。

仮にこの2人が結婚すれば、その子どもが運悪く2人の欠陥遺伝子を”ペアで”持ってしまう確率は、1/4という極めて高いものになります。いとこ同士の結婚でも、同様に高い確率になります。血縁関係のない者同士の結婚では、同じ遺伝子が傷ついている可能性は極めて低いので、安全です。

欠陥遺伝子が原因となる病気は、治療が困難です。その病気の代表に、がんやダウン症があります。欠陥遺伝子が発現すると、いかに恐ろしいか、お分かりいただけると思います。

遺伝子がペアを組むことで、片方の欠陥を補う仕組みになっていますが、実の兄弟姉妹やいとこ同士の結婚では、その安全装置が正常に作動しないのです。これが、一般的に近親結婚が禁止されている科学的な根拠です。

では、人類始祖のカインとその妻の結婚では、このような心配はないのでしょうか。

遺伝子の欠陥は、何世代も遺伝子を複製していく中で生じるものです。従って、人類初の遺伝子複製が行われたアダムファミリーでは、欠陥遺伝子が生じている可能性はゼロに近いので、きょうだいが結婚しても「ほぼ心配ない」と言えるでしょう。遺伝学的に見て、近親結婚は人類始祖の家庭にのみ許された特例だと言えるのです。

まあ、これは『旧約聖書』の話が正しいという前提で、科学的にも説明できるように考えたものです。そもそも人類の起源には、単一起源説と複数起源説があります。『旧約聖書』の話は単一起源説です。

複数起源説とは、人類は1組の男女からスタートしたのではなく、複数の男女が世界の別々の場所で同時発生的に誕生して、それぞれの場所で生み広がっていったというものです。複数起源説が正しければ、カインの妻は別の場所から来たと考えればいいだけです。

どうでもいい話を長々とすみません。


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