「非常事態宣言」と騒ぐだけでは「地球の免疫作用」には勝てません


全国知事会議が佐賀県唐津市で開催され、なんと「少子化非常事態宣言」が採択されることになりました! 少子化問題は、もうずいぶん以前から議論されてきたはずですが、結局のところ有効な対策を講じることができなかったわけです。ぼくの長男が10歳の時(7年前)に以下のような会話をした記憶がありますから、「非常事態宣言」と騒ぐだけでは何も進まないと思います。

日本が少子化であたふたする中で、世界の人口は増え続けています

世界人口
(グラフ:国連人口基金東京事務局サイトより)

「しょうしかって何?」

少子化問題を取り上げたテレビ番組を見ていたぼくに、10歳の長男がたずねてきました。

「生まれる子供の人数が減っている、ということさ」

「ふーん。良かったね」

「・・・」

少子化は将来の労働力を低下させ、社会保障制度の崩壊につながる、良いことではない・・・。ぼくは、小学生にも理解できるように平易な言葉で懸命に説明しました。少子化が「良いこと」であるなどと勘違いされたら困ります。

懸命の説明のかいもなく、長男は言いました。

「だってパパ、去年は『人が増え過ぎると良くない』って言ったじゃん」

「・・・」

確かにそうなのです。前年6月、国連人口基金から「世界人口白書」が発表された時に、「地球の人口が増え過ぎると良くない」と長男に説明しました。同白書によれば、2050年には世界の人口は約91億人になると書かれていました。当時(2008年)の人口が約67億人でしたから、ものすごい増加率です。このペースで人口が増え続ければ、やがて食糧生産が追いつかなくなります。エネルギー消費量も増え、化石燃料の枯渇も早まり、環境破壊もますます深刻になります。

ちなみに、2013年の「世界人口白書」では、人口が71億6200万人で、前年より約1億1000万人増えています。2050年の世界人口予測は、2008年当時よりもさらに増え、96億人と推計されています。

「増えてたのが減ったんだから、良かったじゃん。簡単な引き算だよ、パパ」

長男は、得意そうに言って、部屋を出て行きました。

日本という一国にとって、少子化問題は深刻です。しかし、地球という大きな枠組みで考えれば、小学生の長男が言うことにも一理ありました。

少子化問題は環境問題でもあります

地球
「ガイア仮説」という学説があります。1979年にイギリスの科学者ジェームズ・ラブロックが提唱しました。ひとことで言ってしまえば、「地球は1つの生命体である」という仮説です。

地球は、40億年前から生物にとって最適な環境を維持してきました。例えば、大気中の酸素濃度は、さまざまな生物の連係プレーによって、ずっと21%に保たれてきました。この濃度より高くても低くても、生物は生きていけません。人間が体温を36.5度前後に保って生きているように、地球の大気成分も悠久の歴史を通じて一定に保たれてきたのです。

地球上の生物は、環境に守られ、かつ、自らが環境を創造してきました。そのような共生社会の中で、人間だけが環境を破壊してきたのです。もし地球が生命体であるなら、人間は今、そこに宿った病原菌のような存在になってしまっているわけです。

人間が病におかされれば、免疫細胞が病原菌と闘い、健康を取り戻そうとします。同じようなことが地球という生命体の中で起きているのではないでしょうか。自然災害や少子化は地球の免疫作用ではないでしょうか。地球にとって、これ以上、人間が増え続けては困るのではないでしょうか・・・。

地球が意志をもって、人口の増加を調整しているかのように書きましたが、これは誇張です。しかし、人間が周りの環境から大きな影響を受けていることは間違ありません。大自然の力の前には、人間は無力に近いのです。

人間は、そのように圧倒的な力をもつ環境の中で、必死に喜びを得ようとします。幸せになろうとします。逆に言えば、悲しみや不幸を求める人間はいません。他人から見て、「あんなことをしたら不幸になるぞ」と思うようなことでも、当の本人は「幸せになる」と考えて行動しているのです。

少子化問題の根底にも、この原理が働いていると思います。つまり、「先進国という環境」の中では、結婚し、子供を生み、家庭を築くことが、「喜びでない、幸せではない」と考える人々が増えているということです。

その理由は、人それぞれでしょう。「仕事が最高の喜び」という女性もいるでしょうし、「家族に拘束されるのが嫌だ」という男性もいるでしょう。「2人だけの時間を大切にしたい」という夫婦、「子供を生み育てる経済力がない」という夫婦もいるでしょう。あるいは、「こんなに犯罪や災害の多い世の中に子供を生んだら、後で恨まれる」という理由もあるかもしれません。

「この選択こそ最高の幸せ!」というものから、「仕方なくこちらを選んだ」というものまで、程度の差はありましょう。いずれにしても、「こちらの方が、より喜びであり、より幸せである」と考え、「結婚、出産、子育てではない道」を選択しているはずです。その選択の前提には「置かれた環境」があります。もし環境が変われば、子供を生みたいと思う人々は多くなるに違いありません。つまり、少子化は環境問題であると言えます。

「家庭を築くことが最高の幸せである」という価値観を広めるしかありません

家族
子供を生みたくても生めない不妊症の方々には、この理屈は合わないと感じられるかもしれません。しかし、生めない体質となってしまった遠因には、生活してきた環境が多分に影響しています。やはり環境問題です。心も身体も、環境に影響されるものです。

人間は、自らが快適に暮らせるように、環境を作り替えてきました。山を切り開き、川をせき止め、海を埋め立てました。アスファルトやコンクリートで地面を覆いました。夏は涼しく、冬は暖かい居住空間を実現しました。やりがいのある仕事や、楽しい娯楽も増えました。そうやって築かれた先進国という環境の中で、人間は幸福になる道を選択してきました。その結果、少子化という現象が生み出されたのです。

そもそも、子育ては一大事業です。苦労が多いです。その苦労を喜びに感じられなくては、わざわざ選択などしないでしょう。他に楽しいことがあれば、そちらを選ぶに決まっています。それが人間です。

だから、もし少子化問題を解決したいのであれば、「家庭を築くことが最高の幸せである」という価値観を広めるしかありません。家庭生活に喜びを感じる人が多くなれば、より楽しく子育てができるように、人々は環境を作り替えていくでしょう。そうやって変革された環境が地球にも優しければ、さらによろしいです。

とにかく、モチベーションの原点となる価値観を抜きにして、小手先だけで少子化対策を行っても効果はないと思います。

かく言う私には、3人の子供がいます。末の子は、妻が38歳のときに生みましたから、お産は大変でした。それでも3人の子供を生む選択をした理由は、当然のことながら、家庭が最高の喜びだと感じたからです。

安っぽいテレビドラマを見ているよりも、子育てに奮闘している方が楽しいです。チャラチャラした歌手の歌を聴くよりも、子供の笑い声や、兄弟喧嘩をしている声を聴いていた方が癒されます。

地球という生命体が、今後どんな免疫作用を起こすか分かりません。子育てにとって、ますます厳しい環境になるかもしれません。それでもわが子たちには、ぜひ同じ子育ての喜びを味わってほしいと願っています。


「非常事態宣言」と騒ぐだけでは「地球の免疫作用」には勝てません” へのコメントが 2 点あります

  1. 日本では深刻な少子化現象ですが、木を見て森を見ずの如く息子さんの視点も見逃せませんね。
    ガイア仮説が正しいとすれば、人類全体も一つの有機体である観点が世界に浸透すべきだと思います。
    まぁ、その前に国境や民族紛争を解消する、世界は一家人類は兄弟と言った世の中が実現しないと難しいかな。

    • 少子化問題は先進国特有の問題であって、世界全体では人口増加のほうが問題なんですよね。真逆です。これについてどう考えるかで、対応も変わってくるというものです。

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