紙のリサイクルも、環境に優しくありません。リサイクル紙を作るには、ものすごく手間が掛かります。つまり、たくさんのエネルギーが必要だということです。省エネとは正反対の行為が、紙のリサイクルなのです。
紙のリサイクル工程は、次のようになります。
まず、家庭やオフィスから捨てられた紙が、トラックに乗せられて運搬されます。この際、トラックを走らせるために、石油から作られたガソリンを消費することになります。
製紙工場に着くと、紙に印刷されているインクや、紙製品の加工に用いられているプラスチックや金属類を分別するために熱しますが、それには石油を燃やします。それだけでは分別できないので、石油から作られた薬品まで投与することになります。
これで紙の原料ができますが、残った廃液を安全に捨てるためには、やはり多くの石油を使って処理しなければなりません。
このように紙のリサイクルも、石油資源の大いなる無駄遣いなのです。
しかも、手間が掛かっているのでコストも高くなります。値段が高くても質が良ければ購入する人もいるでしょうが、紙はリサイクルすると質が劣化します。これは「高分子」という粒子で構成されている紙の宿命です。質の悪い紙に印刷しても、細かい文字や画像が見えにくくなります。粗い粒子でできた紙では、少ない情報量しか印刷できないのです。高価で質の悪い紙など、買う人はいません。
結局、100%リサイクル紙などというものは売れません。製紙業界でも、「高分子工学からみて、40%リサイクル紙でやっと現代人の要求する質に耐え得るものだ」と言われてきました。そのような科学的根拠から、年賀状にも「リサイクル紙を40%使用した年賀状」というものが販売されました。
ところがどっこい、そのリサイクル紙でも偽装問題が発覚しました。最近はいろんな偽装事件があったので記憶からなくなっているかもしれませんが、リサイクル紙年賀状事件というものもあったのです。「リサイクル紙を40%使用している」と謳っていながら、実は1%しかリサイクル紙が入っていなかったというものです。1%なんて、無いに等しいです!
「環境にやさしいリサイクル紙年賀状」などという謳い文句で庶民を騙した業者は許せません。しかし、この事件で図らずも判明したことは、インクジェットプリンターで使えるリサイクル紙含有率の限界は1%ということです。それ以上の含有率ではプリンターの性能が十分に発揮されないということを、悪徳業者が教えてくれたのです。リサイクル紙は、情報量が増えた現代人のニードにも合わないのです。
省エネに逆行し、現代人が必要とする情報量も扱えないリサイクル紙を、わざわざ作る必要はないと思います。
森林は、太陽エネルギーを主として成長します。いずれ枯渇する石油を使って紙を作るより、半永久的に降り注ぐ太陽エネルギーから紙を作るほうが・・・つまり森林をしっかりと管理して紙を作るほうが、はるかに省エネで環境に優しく賢い選択です。より根本的には、紙の使用量を減らすことこそ、先に考えられるべきでしょう。