人類の平和のために使いたい核分裂と核融合


9月3日、北朝鮮が核実験を行い、しかも「水爆実験に完全成功」と発表し、大騒ぎになっています。米朝戦争勃発の可能性がますます高まっています。

水爆(水素爆弾)は、原爆(原子爆弾)よりも威力が大きいです。原爆が核分裂を利用しているのに対し、水爆はよりエネルギーの大きな核融合を利用しているからです。これらは殺人兵器ですが、核分裂を平和利用しているものが原発であり、核融合も平和利用しようという動きがあります。

殺人兵器の解説をするのは嫌なので、平和利用のほうで説明します。どちらも原理は同じです。要は、そこで発生する膨大なエネルギーを周囲に拡散して人殺しに使うのか、炉内で制御して発電に利用するのかということの違いです。

原発は、核分裂を利用して発電しています。ウランやプルトニウムという物質を燃料にして、そこに中性子を当てることで核分裂が起きます。

例えば、ウラン235に中性子を当てると、クリプトン92とバリウム141に分裂します。その分裂の際、2~3個の中性子が一緒に生まれます。その中性子が、別のウラン235に当って、また分裂して中性子が生まれ、その中性子が・・・と、連鎖反応が起きます。こうして、継続的にエネルギーを得ることで、発電に利用するのが原子力発電です。

この連鎖反応を止めることが難しいのです。原発に事故などが起き、うまく止められないと、原爆のようになってしまいます。チェルノブイリ原発事故では、まさにそれが起きて原爆化しました。福島原発では、この停止作業はうまくいったので、爆発しなかったわけです(後に起きた爆発は核分裂によるものではありません)。

ただし、分裂が止まっても、分裂した後にできた物質は不安定で、放射線を放出しながら安定した状態になるまで崩壊します。この際に崩壊熱という熱を出します。これを冷やすことが難しいのです。今、福島で取り組んでいるのは、まさにこの崩壊熱を取り除く作業です。

原子が崩壊する際に、放射線と崩壊熱を出します。従って、崩壊熱が冷えてなくなるまで、放射線も放出され続けるということです。

これは事故が起きなくとも、原発を点検などで停止した場合も同じように崩壊熱が発生します。また、使用済み核燃料もずっと冷やし続けているわけです。本当に安全になるまで冷やすには、10年くらい必要です。10年経って、やっとコンクリートなどで包んで固めて、処分場に埋めるわけです。

このように、核分裂を利用する原子力発電は、極めてやっかいなものなのです。

核融合とは、こういう核分裂とはまったく異なるものです。核融合炉の燃料は、水素です。厳密に言えば、重水素と三重水素です。

水素の原子核は、1個の陽子。この原子核の周りに、1個の電子が回っています。

重水素の原子核は、1個の陽子と1個の中性子。この原子核の周りに、1個の電子が回っています。

三重水素の原子核は、1個の陽子と2個の中性子。この原子核の周りに、1個の電子が回っています。

重水素と三重水素がぶつかると、1億度の熱を発しながら、ヘリウムと中性子に変わります。これが核融合という現象です。このときの、1億度の熱を利用して発電しようというのが、核融合発電です。

核融合発電は、まだ実用化していません。実験段階です。技術的に、まだ困難な部分があります。しかし、核分裂による原子力発電よりも魅力的なので、研究が続けられています。その魅力とは、「安全」と「無尽蔵の燃料」の2点です。

第1の魅力「安全」ですが、福島のような原発事故があったので「本当に安全かよ?」という疑問は確かに生じるでしょう。むろん、絶対に安全とは言い切れません。しかし、少なくとも核分裂を利用した原子力発電所よりも、何千倍も安全です。

核融合は、核分裂のような連鎖反応ではないので、すぐに止められます。燃料の注入を止めてしまえば、すぐ止まります。一度動き出した原発を止めるのは難しいですが(それでも福島事故では見事に止まりましたが)、核融合炉は極めて簡単に止まるのです。

また、核融合反応の後に残るのは、ヘリウムと中性子だけ。ヘリウムとは、風船に使うあの気体で、安全です。

もう一つの中性子が危険。これが漏れ出さないように、核融合炉を頑丈にしておく必要があります。これは設計を厳格にすれば、何とかなるでしょう。事故が起きて、炉に穴などが開けば、そこから漏れて危険でしょうが、その前に核融合反応を止めてしまえば中性子は作られなくなります。

つまり、今の福島原発のような状態になっても、10年以上も中性子が発生し続けるわけではないのです。使用済み核燃料などよりも、ずっと安全です。

第2の魅力「無尽蔵の燃料」。重水素は海の中に無尽蔵にあります。枯渇する心配はありません。ただし、三重水素は自然界にほとんど存在しません。三重水素は、リチウムから作ることができます(リチウム電池で最近有名になりました)。リチウムのほうは、現在たくさんの鉱脈があります。しかも、海水の中にもリチウムがたくさん含まれているのです(ただし、海水中のリチウムを取り出すには、高度な技術が必要です)。

このように、核融合を利用した発電が実現すれば、現在の原発にとって変わる新エネルギーになるでしょう。太陽も、他の恒星も、核融合で光り輝き、熱を発しています。そういう意味では、核融合は究極の「自然エネルギー」とも言えるでしょう。

しかし、今のところ「実用化への準備が完了」の目標が2050年です。まだ40年近くかかります。しかも、準備完了(つまり基礎研究、実験の終了)がその時期ですから、実際に稼働するにはさらに時間がかかるでしょう。

ぼくは、核融合こそ新たに人類が利用するべきエネルギーであると思っています。むろん、マイクロ水力発電(ダムを造らないもの)、太陽光発電、風力発電、地熱発電などの自然エネルギーも必要でしょう。しかし、それだけで今の原発分の電力を得られるとは、到底思えません。日本は高度文明社会という立場から没落する覚悟を強いられます。高度文明社会に電力は不可欠です。

「電気など使わず、昔に戻ったいい」という感傷的な意見もありますが、そうなった途端に手のひらを返したようにわが国を侵略しようとする国々が周囲にあることも、考慮していなければなりません。エネルギー問題は、国防という観点で考えることも必要です。


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

*