地球上の生物が1億年周期で大量絶滅している現実を直視し、今の生活に感謝しましょう


恐竜の化石
ぼくたち人間は、ある地球規模の出来事が起きなければ、この地球に決して誕生できませんでした。その出来事とは、今から6500万年前、中生代白亜紀の終わりに訪れた恐竜の大絶滅です。1億6000万年以上にわたって地球上を支配してきた恐竜たちが、突然ごっそりと姿を消した結果、哺乳類がその空白を埋めて大繁殖することができたのです。

実は、地球上に訪れた大絶滅は白亜紀末だけではないことが分かっています。5回の大量絶滅期があったのです。専門家の間ではビッグファイブと呼ばれています。

それまで地球上に満ちていた生物のほとんどが突然消え失せてしまうという出来事は、極めて特殊なことです。そのような特殊事例が5回も起きているということは、単なる偶然とは考えられません。しかも、この5大大量絶滅期は、ほぼ1億年周期で訪れていたのです。

この謎を解き明かしたのは、フロリダ州立大学の地球物理学者デヴィット・ローパーです。彼は、さまざまな実験を通して地球内部の挙動を詳細に解明したのです。それは概ね次のようなものです。

地球の中心にある核(コア)は鉄とニッケルからできており、内核と外核に分かれています。外核の周りにはD層(岩石層)があります。内核によって熱せられた外核は、D層との温度差によって対流を発生させます。

D層は、外核の対流によって運ばれた熱で溶かされます。溶けて粘性の低下したD層は、軽くなり、上昇を開始します。この上昇するD層はホット・プルームと呼ばれ、地殻を押し上げたり、大規模な火山爆発を引き起こします。

海底の地殻が押し上げられれば、海の水深が浅くなります。海の水の量は一定ですから、水深が浅くなった分だけ、陸地に海水が浸出していき、海面の面積が広がります。つまり、広く浅い海になるわけです。このような海では、プランクトンが繁殖しやすくなります。

プランクトンが急増すると、今度は赤潮、青潮が大発生します。すると海中の酸素が失われます。海で生息する生物たちは酸欠状態になって死に絶え、彼らを食物としていた生物も連鎖的に絶滅していったわけです。

ホット・プルームが地殻を突き破り、火山の大爆発として噴出すれば、地球は寒冷化します。大量の火山灰で太陽の光が遮られるからです。地球は氷河期に突入し、やはり大絶滅につながります。

また、外核の対流は自転の影響を受けて回転していますが、そのことにより地球磁場が発生しています。コイルに電流を流すと磁界が発生するのと同じ原理です。

地球磁場は、宇宙から降り注ぐ大量の宇宙線を遮断する、重要な役目を果たしています。宇宙線の中には、生物にとって有害なものも含まれています。人間が多く浴びると、皮膚ガンになることも知られています。この宇宙線を遮断してくれている地球磁場は、私たち生物にとって極めて大切なものなのです。

しかし、D層が極限まで熱せられると、外核との温度差がなくなって対流が停止してしまいます。その結果、地球磁場が消滅し、宇宙線が大量に降り注ぎ、大絶滅に拍車をかけることになります。外核の対流が停止して地球磁気が消滅するときに起きる衝撃的な現象の数々は、映画『ザ・コア』で描かれています。関心のある方は、一度ご覧になってください。

宇宙線が多く降り注ぐと、雲の発生量が多くなることも分かっています。雲の量が多くなれば、やはり太陽からの熱が遮断されますので、地球は寒冷化に向かいます。

雲は地球からの宇宙に逃げる熱も遮断しますので、逆に温暖化へ向かうのではないかと思われるかもしれませんが、それは一時的なことです。ずっと曇りばかりの天気が続けば、寒くなるのです。

しかし、この状態は長く続きません。ホット・プルームが生じれば熱が上に移動するため、再びD層と外核との温度差が生まれ、外核の対流が再開し、磁場は復活します。宇宙線も、再び遮断されることになります。元の地球へと戻るのです。

D層が蓄えられる熱の量は決まっているので、D層の浮上には周期性があります。これが1億年周期で起きた大絶滅の原因です。

ちなみに、白亜紀末の恐竜大絶滅のときには、巨大な隕石も落下したことが分かっています。ダブルパンチです。絶対に恐竜を絶滅させようという宇宙の意志すら感じます。結果的に、このときに恐竜が絶滅してくれたおかげで、私たちは現在、石油・石炭の恩恵で文明を維持しているわけです。

では6回目の大量絶滅期は、いつ訪れるのでしょうか。前回が6500万年前に訪れていますから、1億年までには残り3500万年ですね。いえいえ、そんなに単純な計算はできません。46億年の地球史レベルでみれば、6500万年も1億年も1億2000万年も、ほとんど同じです。

つまり、今すぐ6回目の大量絶滅期が訪れても、少しもおかしくないということになります。むろん、あと5500万年後に訪れても、少しもおかしくありません。

少し心配なデータがあります。ここ400年間、地球磁場が減少を続けているのです。しかも、最近50年間では減少の割合が急速になっています。このペースで減少が続けば、約1000年で地球磁場が消滅することになります。もちろん、400年ということも地球史レベルでみれば、ほんの一瞬のことです。地球史的にはごく一時的なことで、すぐに磁場が増加に転ずるかもしれません。

いずれにせよ、この地球で最も起こってほしくないことは、外核の対流が停止することです。これが起きると、地殻の隆起、火山の大爆発、地球磁場の消滅・・・そして地球寒冷化による大氷河期が到来します。

ぼくらは科学技術によって地球を征服したような気になっているかもれませんが、D層が浮上して外核の対流が停止したら、ひとたまりもありません。今の科学技術では到底太刀打ちできないのです。そういう意味でも、今、地球で生活していられる現実に、まずは感謝して生きたいものです。


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