人が「イチかバチか」の賭けに出るとき


競馬
もう過ぎてしまいましたが、1月8日は勝負事の日だったそうです。

勝負事をしている時の人の心理 損をしても気持ちが冷めないのはなぜ?

1月8日は勝負事の日だ。定めた団体等は不明だが、「イチかバチか」という語呂に合わせて1月8日は勝負事の日とされている説が有力のようである。改めて考えてみると、世の中にはたくさんのギャンブルで溢れている。代表的な例としてパチンコ、競馬等があるが、あなたの身の回りにもその手のギャンブルにハマっている人はいないだろうか。なかにはギャンブルにハマる人の心理が分からない……と疑問を感じている人もいるかもしれない。

記事では、心理学者の内藤誼人氏が、勝負事にハマる理由などを心理学的に解説しています。詳しくは記事を読んでもらうとして、ぼくは認知科学的なアプローチで説明してみたいと思います。

ギャンブルといわずとも、人は「イチかバチか」の賭けに出るときがあります。もう少し数学的に表現すれば、人は確率的に不利な選択するときがあるということになります。例えば、あなたが医師だとして、次のような状況に置かれたら、どのような選択をするでしょうか。

【設問1】あなたの病院に入院している400名の患者が、新型ウイルスに感染してしまいました。新型ウイルスであるため、治療薬はまだ開発途上です。もしこの薬を患者に投与すると、75%の確率で400名全員が助かりますが、25%の確率で全員が死亡します。一方、全く治療をしない場合の死亡率は25%なので、300名が確実に助かります。あなたは薬を投与するでしょうか、しないでしょうか。

こういう設問をたくさんの人にすると、「薬を投与しない」と答える人が圧倒的に多くなるそうです。では、次の設問の場合はどうでしょうか。

【設問2】あなたの病院に入院している400名の患者が、新型ウイルスに感染してしまいました。新型ウイルスであるため、治療薬はまだ開発途上です。もしこの薬を患者に投与すると、75%の確率で400名全員が死亡しませんが、25%の確率で全員が死亡します。一方、全く治療をしない場合の死亡率は25%なので、100名は確実に死亡します。あなたは薬を投与するでしょうか、しないでしょうか。

こういう設問をたくさんの人にすると、「薬を投与する」と答える人が圧倒的に多くなるそうです。

お気付きでしょうが、この2つの設問は全く同じことを言っています。【設問1】は、「400名全員が助かり」とか「300名が確実に助かり」というように、助かるというポジティブなことを比べさせています。【設問2】は、「400名全員が死亡」とか「100名は確実に死亡」というネガティブなことを比べさせています。

薬を投与したときの効果は、確率でしか分かりません。いわば「イチかバチか」の賭けです。全員が助かることもあれば、死ぬこともあるということです。一種のギャンブルです。一方、治療しない場合には「300名が確実に助かり」とか「100名は確実に死亡」というように、結果が確実に見えています。

つまり、人はポジティブなことを選択させられると確実なほうを選び、ネガティブなことを選択させられると「イチかバチか」の賭けに出るというわけです。これが認知科学の研究で得られた結論です。

しかし、母数が小さくなったり、近親者が登場したりすると、逆の結果になることが分かっています。要は、「病院に入院している400名の患者」ではなく、例えば「あなたの家族4名」という設定です。このように母数が小さくなり、自分の家族が対象になった途端、人は「イチかバチか」の賭けのほう、つまり「薬を投与する」という選択肢を取る場合が多いのです。

医師は人の命を救いますが、仕事であることには違いありません。仕事と割り切るならば、やはり失敗をする可能性が少ないほう、確実に300名が助かるほうを選びたくなるものです。その代わりに100名は死んでしまうのですが、より多くの人数が確実に救われる道を選択するでしょう。全員助かるか全員死ぬかという「イチかバチか」の賭けは選択しないのでしょう。

ところが家族4名となった場合には、薬を投与しなくても確実に3名は助かるというほうに目は向かないのです。それよりも、薬を投与しなければ確実に1名が死んでしまうということに目が向きます。そもそもの母数が少ないということと、愛する家族ということで、1名でも死んだら大きな痛手となるからです。だから、全員が救われるなら「イチかバチか」の賭けに出たいと思うのでしょう。

ギャンブルの場合も、基本的には同じだと思います。ある確率でもうかるか損をするかというのがギャンブルです。ギャンブルをしなければ確実に得もしなければ、損もしないのです。構造としては、上記の例と同じです。

従って、ギャンブルにハマる人は、第1に「今よりもうかる」というポジティブなことを比べているようで、実は違うのかもしれません。むしろ「得をしない」とか「やらないほうが損をする」というネガティブなことを比べているのではないでしょうか。

または、母数の少ない近しい集団を基準にしているともいえます。この場合、自分1人です。自分1人が確実に「得をしない」とか、確実に「やらないほうが損をする」よりも、「イチかバチか」の賭けに出たくなるのではないでしょうか。

まあ、いつも確実な選択ばかりでは、人生面白くありません。たまには「イチかバチか」の賭けもいいかもしれませんが、依存症的にはならないように注意したいものです。


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