喫煙者を採用しない企業と、国民にタバコを売って税金を徴収する政府


タバコ
拙稿『科学盲信警報発令中!』「第4章 新しい科学を生み育てよ! 星野リゾートの場合」で紹介した星野リゾートが、先般、斬新な採用指針を発表して話題となっています。

あなたはたばこを吸いますか?

大変申し訳ございませんが、星野リゾートグループでは喫煙者は採用いたしておりません。
それが企業競争力に直結している課題だからです。

作業効率
喫煙者は血液中のニコチン含有量の減少により集中力を維持することができなくなります。(中略)結果的に社員の潜在能力を低下させています。
施設効率
健康増進法の施行により、企業内の職場では分煙環境が必要になってきております。しかし、リゾート事業においては、少しでもスペースがあるなら顧客へのサービスに当てるべきです。
(中略)
職場環境
喫煙習慣のある社員には喫煙のための場所が設置され、より頻繁に休憩が認められるということは、喫煙習慣のない社員から見ると不公平に感じる問題です。
「なぜニコチン依存症の社員だけを企業は優遇するのか」とアルコール依存症の社員が主張したら、従業員食堂の横に社員用のバーを設置するのでしょうか。ニコチンが切れて集中できないという状況は、アルコールが切れて手が震えるという状況と差はありません。
(中略)
採用指針
面接時に、必ず、喫煙の有無を確認させて頂いております。
あなたが喫煙者である場合には、入社時にたばこを断つことを誓約して頂ければ、問題なく選考に進んでいただくことは可能です。

なかなか思い切った宣言をしたものだと思いました。タバコは健康に良くありませんから、社員の健康を守るためはいいことだと思います。また、特に星野リゾートは宿泊者などのお客さまを相手にする仕事ですから、お客さまの健康を守るためにも、英断だと思いました。

実は、ぼくも喫煙者でした。やめてから30年近くたちます。かなりのヘビースモーカーで、1日50本吸っていました。当時勤めていた新聞社では、まだ分煙などということもなく、デスクで自由に吸えました。新聞の編集という仕事は、締め切りに追われてストレスだらけであったので、職場の喫煙率は100%でした。

禁煙を考えるようになったのは、その職場で尊敬していた先輩が肺がんで亡くなったからです。まだ56歳でした。でも、ニコチン依存症になると、そんなに簡単にはやめられません。禁煙が3日と続くことはありませんでした。なんたって、職場では皆喫煙しているわけです。やめようと思っても、なかなかやめづらい環境です。

結局、やめられたのは、映像メディア業界に転職することを契機としてでした。その職場では喫煙者が居なかったことが大きかったです。人間は環境に大きく左右される動物です。周りからタバコがなくなれば、結構自然にやめられたりするものです。

その他にも禁煙できた大きな要因があるのですが、本論と関係ないので割愛します。今でしたら、禁煙外来のある病院がありますから、ぼくのころよりもずっと禁煙しやすい環境だと思います。喫煙者の皆さまは、健康のためにぜひ喫煙にチャレンジしてほしいものです。

国立がん研究センター・がん対策情報センターのサイトに掲載されている喫煙とがん 4. 喫煙とがんの関連の大きさ」「表2 日本における喫煙とがん死亡についての相対リスクと人口寄与危険割合−3コホート併合解析研究(1983年〜2003年) 」によれば、タバコを吸ったことによる「全がん(がんの種類を問わない)」リスクは、男性が2.0倍、女性が1.6倍となっています。

そもそも、私たちが普通に生活をしていてがんになる確率は、驚くほど高いのです。同じく国立がん研究センター・がん対策情報センターが公表しているものです。最新がん統計 3. がん罹患(新たにがんと診断されること 全国推計値)」「5)がんに罹患する確率~累積罹患リスク(2011年データに基づく)」という表の一番上「生涯がん罹患リスク(%)」を見てください。男性が62%、女性が46%となっています。つまり、日本で普通に生活しているだけで、男女共、一生の間で「ほぼ2人に1人はがんになる」ということです。

ただでさえ、がんになる確率は高いのに、タバコを吸うことでさらにその確率を上げてしまうのです。これだけ明確な統計データが出ているのにもかかわらず、喫煙を続けるというのは、あまり良い選択ではないと思います。というか、科学的に考えたら、かなり無謀な選択です。

そういった観点からも、今回の星野リゾートの英断には敬意を表したいです。企業は単なる利益追求をするのではなく、社員やお客さま、ひいては日本国民や世界中の人々の生命の安全を追究していくべきだと思います。そういう企業こそ、この21世紀には躍進するものと確信しています。

それにしても、これだけ健康に害があると分かっているものを国が販売し、売り上げから税金を徴収するというのが分かりません。上記のようなデータが出そろっていない昔だったらまだしも、今は明らかにタバコによるリスクがエビデンスとして得られているわけです。こういうものを国民に販売し、税金を取るという姿勢には納得がいきません。

国民の健康を真剣に考えているとは到底思えません。税収減が怖いのでしょうか。JT(日本たばこ産業株式会社)の職員(連結:5万1563人、単独:8774人、2014年3月31日現在)の雇用を守りたいのでしょうか。確かに税収も雇用も大切です。しかし、国民全体の健康と天秤にかけたら、どちらが大切かは一目瞭然だと思います。

ぜひ日本国政府におかれましては、星野リゾートを見習ってほしいものです。


喫煙者を採用しない企業と、国民にタバコを売って税金を徴収する政府” へのコメントが 2 点あります

    • 七紙774 さん。いらっしゃいませ。いろいろな記事にたくさん投稿してくださり、ありがとうございます。

      そうですね。どうせ宿泊するのでしたら、こういうポリシーを持った施設を選択するというのは、いいことですね。

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