宇宙は何次元?



アインシュタインまでの近代科学では、宇宙の次元を「4」と考えてきました。時間1次元と空間3次元で、4次元時空間と表現します。ところが現代科学では、「どうやら宇宙の次元はもっと多いようだ」と考えられています。

物理学の夢とも言われる「4つの力の統一」を成し遂げる超ひも理論では、宇宙が10次元であると予測されています。その後の研究で、超ひも理論を改良したM理論が11次元であると予想しました。

ちなみに「4つの力」とは、重力、電磁気力、強い力(原子核内で働く力)、弱い力(素粒子の間で働く力)です。この「4つの力」を1つの理論で説明したい(4つの力の統一)というのが科学者の夢であり、アインシュタインもそれに挑戦しましたが挫折しました。現在は、重力を除いた3つの力は、1つの理論(統一場理論という)で説明されています。

なぜ4つの力を統一したいかというと、そうしないと宇宙がビッグバンで始まったことが証明できないからです。ビッグバンとは宇宙の始まりですから、ビッグバンの瞬間には当然、これら4つの力も1つだったはずです。それを理論的に語りたいのです。

超ひも理論やM理論では4つの力を統一して説明できるのですが、何ともその条件として宇宙が10次元、11次元ということを認めろというわけですから、SFみたいな話で常人には付いていけません。

その他にも宇宙の次元に関しては様々な研究があります。「美人すぎる物理学者」と言われるリサ・ランドールの理論が最も少ない次元で、5次元だと語っています。つまり宇宙には、私たちが認識している4つの次元のほかに、最低もう一つ別の次元があることは間違いなさそうなのです。

この「4次元時空間以外の次元」のことを、科学の世界では「余剰次元」と呼んでいます。

まだ、「宇宙が何次元なのか」という問題に結論は出ていませんが、「どうやら6次元以上ではないか」と考えられています。それはADD模型というものから導かれました。ADDとは、この模型を提唱した3人の科学者(アルカニハメド、ディモポーロス、ドヴァリ)の頭文字をとったものです。

ADD模型の詳細は省略します。結論として、「余剰次元方向の大きさ」が導かれるのです。以下の式です。

   大きさ=1032/d-19m(メートル)

dは余剰次元の数です。この大きさの範囲内にある4次元時空間では、「ニュートンの万有引力の法則」が成り立たないというのが、ADD模型の結論でした。

いくつか計算してみましょう。

   1)d=1 ,大きさ=1013m
   2)d=2 ,大きさ=10-3m
   3)d=3 ,大きさ=10-8m
   4)d=4 ,大きさ=10-11m

1)では、「余剰次元が1次元のとき、その次元方向の大きさが1013m」となることを示しています。1013mとは、太陽系の広さに相当します。太陽系での運動では、万有引力の法則は成立していますから、1)の状態ではないことになります。つまり、余剰次元の数は1つではない。宇宙の次元は5次元(4+1)ではない。

2)の10-3mは、1mm(ミリメートル)ということ。実は、これが画期的な理論的発見なのです。ニュートンの万有引力の法則は、そんなに短い距離では検証されていないからです。1798年にキャベンディッシュが行なった検証実験では、20cm(センチメートル)の距離で万有引力が働くことを、何とか検証できました。それより短い距離間で万有引力が働くことは、未だ実証されていないのです。

私たちも、背後に誰かが立っても(霊感とか直感は別にして)、万有引力を感じることはありません。「誰かが後ろに立ったので、後ろに引っ張られる」という体験はないです。万有引力とは、微弱なので検証が難しいのです。

20cmの距離では、何とか万有引力を検証することができました。しかし、それ以下の距離では、未だそれを検証できていません。今後、キャベンディッシュが行なった実験よりも精度が高い技術が開発され、1mmという短い距離での検証実験が成されることが期待されます。もしその結果、万有引力の法則が成立しなかったならば、余剰次元は2つ以上、宇宙の次元は6次元(4+2)以上だということになります。

少なくとも、現段階では「宇宙は6次元以上である」ということが、ADD模型によって理論的に解明されたのです。

さて、ADD模型から導かれる「余剰次元方向の大きさ」って、何だか分かりにくいですね。数学的には説明できるのですが、言葉にして説明するのは難しいです。よく使われるたとえは、下記のようなものです。

私たちが認識している4次元時空間を、2次元だと仮定します。2次元とは「平面」です。本来は、縱・横・高さ・時間の4次元を私たちは認識していますが、仮にその世界をペラペラの平面だと考えてみてください。そのとき、その平面に垂直な方向が、「余剰次元方向」です。そして、2)によれば、その方向の大きさが1mmだというわけです。

「私たちが認識しているペラペラの平面の上に、1mmの高さを持った世界が広がっている」と考えてもいいでしょう。

あるいは、「私たちの4次元時空間の中で、1mmの範囲に別の2次元が含まれている」と言っても良いです。

分かりにくいかな? 高次元の世界は、直感的にはなかなか理解できないですが、想像力を働かせてくださいませ。

はてさて、宇宙は何次元なのでしょうか?


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