2020年東京オリンピック、最悪のシナリオを懸念しています


青空と緑
ぼくは2020年のオリンピック開催地が東京に決まったときから、とても憂鬱です。スポーツは、することも見ることも大好きですから、東京でオリンピックが開催されることはうれしいです。しかし、どうしても素直に喜べません。

理由は、3.11の大震災の復興が遅々として進んでいないからです。津波被災者はいまだに仮設住宅で暮らしている人も多いし、破壊された街はまだまだ荒れた所が多いです。福島原発の被災地に至っては、もう故郷に住めないと諦めて他県へ移住している人が多数です。除染をして何とか放射線量を下げようとしていますが、そんなに甘いものではないと思っています。慌てて帰ったら、かえって危険です。

オリンピックで大金や人材を投じている余裕があったら、こういった被災地の復興に使ってほしいと切に願う次第です。

この未曾有の大震災は、ぼくら日本人に対して、国づくりのあり方そのものを問い直すことを要求していたと思います。そもそも日本は4つの大陸プレートの衝突点にあるため、火山噴火、地震、津波が多いです。台風の経路にも当たります。自然災害多発地帯なのです。そういう場所に住んでいるという自覚が薄れていたときに、あの大震災が起きたのでした。こんな危険な国に原子力発電所があること自体、ガスコンロの上に爆弾を置いているようなものです。

ぼくは科学文明を否定しません。科学者の端くれなので、むしろ積極的に肯定します。原子力発電も、非常によく考えられた素晴らしい技術の結集だと思います。暑い夏には涼しい部屋、寒い冬には温かい部屋で過ごせるのも科学技術のおかげです。こうやってブログを書いて全世界の人へ瞬時に発信できるのも、科学あってのことです。この世から科学を取り除いたら、かなりの数の人類は生きていられないでしょう。

だからといって、人間は科学を用いて大自然を征服したわけではありません。しょせん、ちっぽけな人間の科学技術なんて、大自然の前には大した力ではないのです。たとえるなら、幼児が力士にパンチしているようなものです。力士からすればかわいいもので、ある程度自由にパンチさせてやるのです。しかし、図に乗って悪さすると、ギュッと押さえつけられてしまいます。同様に、科学を過信して自然をないがしろにすると、自然から大きなしっぺ返しを食らいます。

ぼくらは3.11のときに、こういうことを自覚し、自然に対して謙虚に生きていくことを選択するべきだったと思います。それは何も、科学を捨てるというわけではありません。科学を適切に用いていくということです。力士の前で、図に乗って悪さをしない限り、幼児は結構自由に遊べるのです。

ところが、これはどうでしょうか。

新国立は2019年5月完成 総工費は2520億円、下村文科相が方針

そんなに大金を投じて競技場を造る必要があるか、はなはだ疑問です。東北地方の被災地の復興も済んでいないのに・・・。もし先の震災から謙虚に学ぶのであれば、被災地の復興と共に、他の地域の防災はどうなのかを総点検して対処する、ということに国の政策を集中するべきだと思います。日本でオリンピックを開催するのは、そういうことが済んでからでいいと思うのです。福島原発事故の処理も終わっていないのに、世界に向かって「アンダーコントロール」という首相には、さすがに幻滅しました。

端的にいえば、図に乗り過ぎだと思うのです。図に乗り過ぎると、大自然のしっぺ返しを食らいます。もう少し宗教的にいえば、「天罰が下る」ということです。自然を甘く見てはいけません。傲慢になってはいけません。経済優先ではなく、人命優先、安心・安全優先でなければなりません。

もちろん、大自然の営みは人智を越えていますから、100%の安心・安全はありません。だからといって、「どうせ100%はないんだから、とにかく経済優先でいったほうがみんなハッピーになる」という思考停止はやめていただきたいです。100%は無理でも、限りなく100%を追い求めて考えた土台をつくるべきです。それが自然に対する謙虚さであると思います。今の日本には、その土台づくりが十分にあるとは到底思えません。土台がしっかしていないと、いざというときにガラガラともろく崩れ去るのが、自然の理です。

ぼくがとても懸念していることは、東南海(南海トラフ)地震です。いつ起きてもおかしくないと言われ続けている大地震です。

南海トラフ地震対策 想像絶する日々に備える

国の地震調査研究推進本部の長期評価では南海トラフ地帯で発生する大規模地震の確率は「今後30年以内に70%」。高い数字だが、可能性の目安だけにぴんとこない。30年はまだ先にも思え、70%は降水確率のようには想像しがたい。それでも、大地震はいつかは必ずやって来ると、そう思っていて間違いないだろう。

 最悪、死者は30万人超、建物全壊棟数250万戸以上、被害額は220兆円とされる。東日本大震災が被害総額約17兆円(内閣府推計)、死者・行方不明1万8550人(総務省3月時点)であり、その差は推して知るべしである。

記事では「30年以内に70%」という確率は高いけれどもピンと来ないと書いています。こういうものを比べると、もう少しピンとくると思います。

地震以外の自然災害、事故、その他の30年発生確率

交通事故で死亡 0.2%
交通事故で負傷 24%
航空事故で死亡 0.002%

火災で死亡 0.24%
火災で負傷 1.9%
台風で死亡 0.007%
台風で負傷 0.48%
大雨で死亡 0.002%
大雨で負傷 0.5%

ガンで死亡 6.8%
心疾患で死亡 3.4%
肺炎で死亡 2.0%
自殺 0.75%
殺人 0.03%

空き巣 3.4%
ひったくり 1.2%
すり 0.58%
強盗 0.16%

これらのものよりもはるかに高い確率で、3.11をはるかにしのぐ大地震が、今後30年の間にくるかもしれないわけです。それが、「2020年の東京オリンピック開催期間中に限っては、絶対にやってこない」などと断言できません。日本人のみならず、世界各国からたくさんの人々が訪れている期間に、もしそんなことが実際に起きてしまったら、それこそ最悪のシナリオです。ただでさえ災害に対して脆弱な東京が、大変なことになってしまうことは容易に想像できます。「そのときに静岡の浜岡原発が稼働していたら」と考えただけでも、ぞっとします。

むろん、起きないに越したことはありません。しかし、科学の力によってこのように高い確率で起きることが分かっているのに、万全の対策を練らなかったら、それこそ科学を適切に使っているとは言えません。大自然から大きなしっぺ返しを食らうはめになりかねません。為政者の皆さまの再度の熟慮・熟考と、適切な国家運営を切に望むものであります。


“2020年東京オリンピック、最悪のシナリオを懸念しています” への3件の返信

  1. ピンバック: 理念が素晴らしくても、理念の実現に向けた方法論を誤ればNGです | ∂世界/∂x = 感動

  2. > オリンピックで大金や人材を投じている余裕があったら、こういった被災地の復興に使ってほしいと切に願う次第です。
    オリンピックのおかげで税収は結果的にプラスになるのだから、被災地の復興を願うならオリンピックは行うべき。
    それに無職をナマポで養うよりも、同じお金で穴掘りでも何でもやらせて仕事を与えた方が、生産的だし治安も良くなる。

  3. ピンバック: 新型コロナウイルス騒動は東京オリンピック開催に対する最後の警告か – ∂世界/∂x = 感動

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