霊を科学する(10)心の世界と物質の世界



「心はあたかもサーチライトのように脳全体を飛び回り、情報を引き出している」というエクルズの主張に対して、随伴現象説を信ずる科学者たちは「それは熱力学の第1法則に反する」と反論しています。

熱力学の第1法則とは、別名「エネルギー保存の法則」とも呼ばれています。

例えば自動車は、ガソリンを燃やすことによって生じる熱エネルギーで走ります。電球は、電気エネルギーを光に換えます。私たち人間も、食物のエネルギーによって生命を維持します。つまり、エネルギー保存の法則とは、「あるエネルギーが別のエネルギーに変化する」という理論です。

さらにアインシュタインは、物質もエネルギーからできていることを、自らが構築した相対性理論から導きました。エネルギー同士の変化だけではなく、物質そのものをエネルギーに換えることができ、逆にエネルギーを物質に換えることができるというわけです。

つまりエネルギー保存の法則とは、「無から有は生じない」という理論なのです。脳も物質である以上、動かすにはエネルギーが必要です。ペンローズが「心の影」と称したように、心が原因となってニューロンを発火させているとするのなら、心が脳にエネルギーを供給していることになります。

心は物質ではありません。従って、物質的には「無」です。「無から有は生じない。よって物質的には無である心が、脳にエネルギーを供給できるはずがない」というのが、随伴現象説を信ずる人々の反論の主旨なのです。

ところがエクルズは、量子力学を用いてこの反論を見事にかわしてしまいました。量子力学の基本法則である不確定性原理を解くと、次のようなことが導かれるのです。

   エネルギーの誤差×時間の誤差=一定

ここで時間の誤差をゼロとしてみましょう。つまり「瞬間」ということです。この時、エネルギーの誤差は「無限大」となります。要は「ほんの一瞬であるならば、そこに物質があろうとなかろうと、いくらでも多くのエネルギーが得られる」というわけです。

この理論は、分子や原子レベルの、ごく小さい世界でしか通用しません。ですから、私たちの日常生活では「無限のエネルギー」を手に入れることは不可能です。しかしエクルズは、「ニューロンとニューロンの継ぎ目(シナプス)の部分で情報を伝えているエクソサイトーシスという突起は、非常に小さな領域なので、量子力学が十分適用できる」と説明しました。つまり、心という「物質的には無」である存在が、物質であるニューロンにエネルギーを供給できることを見事に示したのです。

これらの事実から、エクルズは次のように結論付けています。

「世界は、心の世界と物質の世界に分かれており、物質世界の一部である人間の脳と、心の世界の一部である人間の心との間には、密接な相互作用が存在する」

物質ではない心が、物質世界に存在すると考えるのは、非科学的な主張です。エクルズが言うように、心は心の世界に属し、脳は物質世界に属すると考える方が、科学的であり論理的です。

では、私たちが死んでしまったら、私たちの心はどうなるのでしょう。心は肉体を通して成長することから、肉体を失った心は、もはや成長できないことが分かります。

しかし、心が心の世界に属している以上、肉体が死んだとしても、心はそのまま心の世界に居続けると考えるのが自然です。その状態の心(肉体を失った心)を「霊」と呼び、その心が居続ける世界こそ、一般的に死後の世界や霊界と呼ばれている所ではないでしょうか?

これ以上、霊についての科学的な考察をするには、まだまだ材料が少な過ぎます。ただ一つだけいえることは、死が確実に訪れるということです。死んだら心(霊)を成長させられません。ですから、一瞬一瞬を大切に生き、常に心(霊)を磨いて行くことが、霊界での唯一の財産になるはずです。

「霊を科学する」の連載は、ひとまずこれで終わりにいたします。毎回読んでいただいた皆さまには、深く感謝いたします。


“霊を科学する(10)心の世界と物質の世界” への2件の返信

  1. 「霊を科学する」完結、ありがとうございいます。
    そして、お疲れさまでした。

    心=霊 なるほど、納得のできる表現ですね。
    どちらかというと、心=ハートマーク=心臓 の
    ようなイメージでしたが・・・・。

    今後の新たな展開を期待しております。

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