「STAP細胞」論文の捏造疑惑騒動と、科学理論の価値


よくあるインターネット上の無責任な批判だったらまだしも、アメリカの有力科学雑誌「サイエンス」までが言及したので深刻です。現代のベートーベン騒動でも嫌な思いをしたのに、真実を追求する科学の分野で捏造が行われたら更に幻滅です。

科学雑誌に「炎上中」「捜査中」とのショッキングな見出しが…

サイエンス
「サイエンス」が「High-Profile Stem Cell Papers Under Fire(注目の幹細胞論文、炎上中)」というタイトルでこの問題を報じたのが、2月17日。小保方さんの論文に掲載された胎盤の写真など3枚が、加工(はめ込みや回転)されているのではないか、という疑いを指摘しました。
ネイチャー
小保方さんの論文を掲載したイギリスの科学雑誌「ネイチャー」も、同じ2月17日に「Acid-bath stem-cell study under investigation(酸性浴による幹細胞研究、捜査中)」と即座に対応。かなり詳しく報告しています。上記「ネイチャー」記事より、一部を以下に抜粋します(ぼくの翻訳なので不正確かもしれません、あしからず)。

小保方さんの学位論文(2011年)にも、 2か所で同じ写真の二重使用がありました。「ネイチャー」論文(2014 年)では、第 1 論文の図 1 で画像の一部に差し替えがありました。第 2 論文では、同一の胎盤写真が別の実験によるものとして使用されています。

共同研究者の若山照彦さん(山梨医大教授)は、「小保方さんに 100 枚以上の胎盤の写真を送ったので、彼女が取り違えたのかも知れない」と話していました。

「ネイチャー」誌は捜査チームを立ち上げ、小保方さんに問い合わせをしていますが、本人から応答がありません。

さらに2月28日には、当の「STAP細胞」論文(2014年)の一部が、ドイツの研究者らがアメリカの生物学会誌に発表した論文(2005年)の文章と10行にわたってほぼ同一であること(コピペ疑惑)まで判明しました。

科学論文の価値は、掲載誌ではなく追試で決定します

実験試験管
科学界に詳しくない人がこのような報に接すると、「なんだ、有力科学雑誌ネイチャーがそんなことも見抜けなかったのか」と思うかもしれませんが、見抜けっこありません。論文審査(査読)は警察のような捜査活動ではないからです。もともと、科学者は真実を追求するものですから、審査も性善説に立っています。

仮に、有力誌の「ネイチャー」や「サイエンス」に「完全に間違っている論文」が掲載されたとして、科学界ではそれほど問題視されないでしょう。なぜなら、科学理論の価値は論文で決まるのではなく、実証されて決まるからです。専門用語では「追試」と呼びます。発表された論文を、多くの学者が正しいかどうか実験で確かめるのです。

この追試で「正しい」と確かめられた理論が、科学界においては真の価値を持つのであって、有名な科学雑誌に掲載されたからといっても、たいしたことはないんです。むろん、「ネイチャーに載ったぞ」と箔がつきますけど。箔だけです。それに飛びついて騒ぎ過ぎたマスコミが問題だと思います。

iPS細胞を開発した山中伸弥教授は、ノーベル賞を受賞しました。追試にパスしたからです。

誰もが、その論文と同じ結果を導くことができなければ、その論文の理論はNGなのです。逆に言えば、誰もが同じ結果を導くことができるから普遍性があるのです。科学技術として応用できるわけです。エアコンを作ったはいいけど、ある家では動き、ある家では動かなかったら困ります。どこでも等しい結果を再現できなくては、その理論は認められないのです。

疑惑の渦中にある「STAP細胞」論文ですが、要は追試にパスすればよろしいのです。むろん、画像を加工したり、他の論文をコピペしているとしたら、大いにけしからん話しですが、本論とはあまり関係ない部分でもあるようです。本論である「STAP細胞」が本当に再現可能なのか、それこそが人類にとって有益であるか否かのメルクマールです。

しかし、今のところ追試もパスしていないようです。以下、毎日新聞の引用です。

STAP細胞:発表1カ月再現失敗相次ぎ 理研手順公開へ

あらゆる細胞に変化できる万能細胞、STAP細胞(刺激惹起性多能性獲得細胞)の作製に成功したと、理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(神戸市)が発表し、1カ月がたった。作製方法が「簡単」とされた点も注目を集めたが、国内外の研究者からは「実験が再現できない」との報告が上がり、論文の不備も指摘されている。理研は、詳細な作製手順を公開する準備を進め、論文の不備についても調査を始めた。
(中略)
iPS細胞(人工多能性幹細胞)を開発した山中伸弥・京都大教授は「iPS細胞が世界で急速に普及したのは、再現性が高く、どの研究室でも作製できたことが大きい。STAP細胞が広く使われるようになるには、再現性の高さがポイントになる」と指摘する。

追試にパスできなければ、多くの仮説と同じく、埋もれて行く運命にあるでしょう。でも、科学ってそういうものです。そうやって、真実に近づいていくものです。箔がつく科学雑誌に論文が掲載されたからすごいのではなく、再現性のある理論を発見することがすごいのです。それが科学の目的です。

もし理論の再現性が認められなくても、小保方さんを過度に非難しないでほしいです。科学者の多くは、失敗を繰り返しているのです。失敗が日常なのです。それが科学の現場です。それだけでも大変な職業です。そういう目で見てあげてほしいです。

むろん、論文に不適切な部分があったのならば、潔く謝罪してほしいものです。それも、真実を追求する科学者がとるべき態度、役割だと思います。


“「STAP細胞」論文の捏造疑惑騒動と、科学理論の価値” への1件の返信

  1. ピンバック: 佐村河内さんと小保方さんにみる「人間の真価が決まるとき」 | ∂世界/∂x = 感動

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