アニメ「サザエさん」の登場人物・波平さんの声優であった永井一郎さんが、去る1月27日に亡くなられました。本日放送の「サザエさん」が永井さん最後の出演だということです。「最後だから観ようかなあ」とも思いますが、もうずいぶん長い間「サザエさん」なんて観ていないので、たぶん忘れてソチ・オリンピックに見入っているかもしれません(永井さん、ごめんなさい)。
イメージが定着してきた声優さんの後任選びは難しいですね
Youtubeでは、永井さんそっくりの声をした人の追悼寸劇がアップされ、「そっくりだ!」、「後任にぜひ!」などと話題になっています。
ぼくも聴いてみましたが、まあ似ているとは思います。でも、そっくりというほどでもないかな。後任に指名されるのかどうか分かりませんが、似ているからという理由だけで後任になるというのは、どうなんでしょうか。
似ているからということで後任になった声優としては、ルパン三世の栗田貫一さんが有名ですね。初代の山田康雄さんが亡くなってから、栗田貫一さんがルパンの声をつとめて、今年で20年になるといいます。山田さんが24年間でしたから、同じくらいのキャリアになりますね。
ぼくの娘などは栗田さんのルパンしか知らないから、「初めは違う人が声優をやっていたんだよ」というと、「げー、栗貫のイメージしかないから、ちょー違和感」と言っていました。ぼくらからすると、1971年から山田ルパンに親しんできたから、栗田ルパンのほうが違和感を抱きます。どうしても「マネしている」と思ってしまうためです。
ああ、だからといって栗田さんのルパンがダメというわけではありませんので、念のため。とにかく、キャラクターと共にイメージが定着してきた声優さんがいなくなったときは、後任の選定は難しいと思います。
同じだから演じられたのか、演じたから同じになったのか?
声優さんについて、「要はアニメのキャラクターの声を演じている」という表面的な理解でいるならば、後任に似ている人を用いるのも良し、イメージ一新ということでまったく違う声の人を用いるのも良し、でしょう。
しかし、実は声優さん自身の人格や、人生観などが、そのキャラクターに乗っかってくるのが、実際のところだと思います。永井さんは「バカモン! 波平、ニッポンを叱る」という本を書いていますが、まさに波平さんの人格・人生観は永井さんのそれと同じだと感じます。
もともと永井さんがそのような人格・人生観をもっていたから波平さんの声を演じることができたのか、波平さんの声を演じていたからそのような人格・人生観をもつようになったのか、それは分かりません。とにかく言えることは、「波平さん=永井さん」であって、「波平さん≠そっくりさん」ではないと、ぼくら視聴者の深層心理では思っているということです。
だから、どんな人が後任になったとしても、今までの波平さんに親しんできた人には、どうしても拭えない違和感があると思います。逆に、これから生まれてくる人たちにとっては、ぼくの娘が「ルパン=栗貫」と深層心理で思っているように、「波平さん≠永井さん」ということになっていくでしょう。
非日常的な出来事に心を惹かれる社会は、良くないですね
それにしてもアニメ「サザエさん」は、長く続きますねえ。1969年から放送されているというのですから、もう45年になるんですね。恐るべき長寿番組です。
特別に、すごく面白いというわけではないと思います。ほんわかした、日常的な話ばかりです。でも、描かれている情景は非日常のSFっぽいですけどね。携帯電話やスマホなどは使っていないし、道はアスファルトではないし、そもそも登場人物はずっと歳をとらないし。そういう意味では、非日常的です。
まあ、古き良き家庭、地域社会が描かれているところが、いいんでしょうね。悲しいかな、それが現代では非日常的なことだから、余計に心を惹かれるのかもしれませんね。そういう意味では、現代社会はこのへんで進歩をやめて、ちょっと後退してみてもいいのかもしれません。
今日は朝、昼、夕と近所の雪かきをしました。普段、ほとんど顔を見ないような人とも、世間話をしながら汗をかきました。こういうコミュニケーションが、非日常的な大雪のときだけではなく、普通の日にもできるようになれば、「サザエさん」の世界に近づいてくるかもしれません。