STAP騒動余波、「理研の倫理観にもう耐えられない」


小保方さんが理研の検証実験に参加したことが話題となっています。そんな中で同じ発生・再生科学総合研究センター(CDB)高橋政代プロジェクトリーダーが「理研の倫理観にもう耐えられない」と語り、波紋が広がっています。でも、小保方さんの実験参加の方がメディアへの露出が多く、高橋さんの動向はそれほど騒がれていません。どちらが重要かといえば明らかに後者なのに、メディアはいつもテキトーです。

医療現場で期待されるもう1つの万能細胞

研究
そもそも、小保方さんが検証実験に参加したから、どうだというのでしょうか? もうネイチャーがSTAP細胞論文を撤回したのですから、「STAP細胞は存在していない」ことになっています。全く白紙の状態です。

彼女が実験しようがしまいが、現時点では科学的に何の価値もありません。科学の現場で日々行われている実験の1つ(one of them)に過ぎません。大騒ぎすることでもありますまい。ちゃんとした手続きでSTAP細胞の存在が裏付けられて、再度ネイチャーなどの有名科学雑誌に論文が掲載されたら、騒いだらよろしいのです。

それよりも重大な問題は、高橋さんの動向です。

iPS臨床研究の中止も 担当リーダー「理研の倫理観もう耐えられない」

人工多能性幹細胞(iPS細胞)を使った世界初の臨床研究を進める理化学研究所の高橋政代プロジェクトリーダーは2日、STAP(スタップ)細胞の論文不正問題で理研への信頼が損なわれたとして、短文投稿サイト「ツイッター」で「まだ始まっていない患者さんの治療については中止も含めて検討する」と臨床研究を中止する考えを示唆した。高橋氏は1日には「理研の倫理観にもう耐えられない」とも投稿していた。

高橋さんが耐えられないとしている理研の倫理観とは、「小保方晴子研究ユニットリーダーの検証実験参加と懲戒委員会の審査中断を決めたこと」を指しています。「できレース」の採用試験で入ってきて、世界的に大迷惑をかけた不正を行った人に再度実験をさせ、処分を保留していることへの憤りです。ごもっともです。どう考えても、理研の倫理観はねじ曲がっています。

これぞ良心的な医師、優秀な科学者

科学的方法
高橋さんは、眼科医として患者さんと接する中でiPS細胞の重要性を認識し、研究してきた人です。しかも研究だけしているのではなく、週2回の診療も続けています。昨年の報道より抜粋します。

世界初のiPS臨床研究へ 治療に使えると直感「私がやるんだ」

人工多能性幹細胞(iPS細胞)で世界初の臨床研究に取り組む。加齢黄斑変性(かれいおうはんへんせい)を対象に国が正式に実施を承認し、スタートまで秒読み段階に入った。

再生医療以外に根本的な治療法がない難病。約10年前にES細胞(胚性幹細胞)を使って研究を始めたが、拒絶反応の問題が立ちはだかった。山中伸弥京都大教授がiPS細胞を開発したと聞いた瞬間、治療に使えると直感し「私がやるんだ」と心に決めた。一刻も早く患者に治療を届けるため、常に技術進歩の先を読んで研究計画を立ててきた。(中略)

動物実験を進めていたとき、新聞で研究を知ったお年寄りが記事を握りしめて駆け込んできた。まだ治療できないと伝えると、目の前で泣き崩れた。「ものすごくつらかった。患者の気持ちは絶対に忘れたくない」。研究だけでなく、眼科医として週2回の診療を続ける。

臨床の現場で患者さんと接しているから、研究への思いも純粋で熱かったのでしょう。だから、今自分が属している理研がこのような体たらくなので耐えられなくなったのでしょう。

ぼくは、高橋さんの発言はちょっと早計で無責任な感じも受けましたが、下記の見解を読んで「そういうぼくの判断こそ早計だったな」と反省しました。

「理研の倫理観、もう耐えられぬ」高橋氏、中止示唆の背景に強い憤り iPS臨床応用

北海道大の蔵田伸雄教授(科学技術倫理)は「今のCDBの状況を見ると、とてもリスク管理ができる状態ではない。高橋氏は恐らく、CDBのガバナンス(統治・管理)に危機感を覚えているのではないか。CDBのトップがしっかりしていないからだ」と指摘。「臨床研究はきっちりとした記録を取った上で、患者の安全を確保することが重要になる。高橋氏は現場でリスク管理ができるかどうかを考え、良心的な研究者の判断をしたのだと思う」と話した。

つまり高橋さんは、患者さんの安全を第一に考えたということです。自分の研究がどうだとか、組織の事情がどうだとか、そんなことを判断基準にしていないのです。素晴らしいです。良心的な医師であり、優秀な科学者です。

こういう事態を打開する意味でも、理研は、「研究不正再発防止のための改革委員会」の提言を真摯に受け止め、一刻も早くCDBを解体・廃止して出直すべきです。


“STAP騒動余波、「理研の倫理観にもう耐えられない」” への2件の返信

  1. 初めは検証実験に小保方さんを参加させないと言っていたのに、結局参加させることに決めました。なんか再現出来なかったら、小保方さん一人を嘘つきの悪者にして、結局自分達の責任をうやむやにしてしまおうとする理研の思惑もあるような気もしてくるのですが…。
    まぁ200回も成功しているのですからSTAP細胞の存在を証明してくれるのでしょうが、出来なかった時にまた理解できないような言い訳だけはしないでほしいです。

     私は高橋医師の研究に期待と関心を持っている一人です。今回の発言は理解できますが、なんとか研究の手は止めずに、一日でも早く加齢黄斑変性症の治療法を見つけてほしいと願っています。

    • みちのく行脚さん。いらっしゃいませ。
      小保方さんを参加させて再現できなかったら、またメディアが大騒ぎしてくれます。その世論の後押しで、彼女に全部責任を押し付けることができますからね。汚い手段です。

      高橋先生には、ぜひ研究を続けていただきたいです。そのためにも、理研が真剣に改革するべきだと思います。

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