赤っ恥をかきかねないマイ箸(まい・はし)推進運動


「森林を大切にしよう」というコンセプトからスタートしたマイ箸推進運動が盛んです。日本人が使う割り箸を作るために中国の森林が伐採され、土地の砂漠化が深刻になってきたためです。

普段から自分専用のマイ箸を持ち歩き、飲食店で割り箸を使用しないことについては、ぼくもある程度は評価します。何でも使い捨てにする習慣を改め、物を大切にする精神を復興させる上で、マイ箸の推進はよろしいと思います。

しかし、具体的に割り箸の生産をストップさせない限り、いくらマイ箸を奨励したところで森林を守ることにはなりません。

「だからこそ、マイ箸を使う人を一人一人増やし、飲食店の割り箸使用量を減らそうとしているのだ」と言うかもしれません。千里の道も一歩から、チリも積もれば山となる、といった精神は尊重します。でも、はっきり言って、そんな悠長なことをしていても森林伐採は止まりません。日本国民全員がマイ箸を使うようになった頃には世界中の森林がなくなっていた・・・なんていうことに、なりかねません。

最小の労力で最大の結果をもたらしてこそ、環境のためになります。複雑にこね繰り回す文系の発想ではダメです。もっとストレートに、理系の発想でやったほうが環境のためです。簡単です。中国から割り箸を輸入することを、日本政府の権限で禁止したらよいのです。

これ一発で、日本から割り箸は姿を消します。困るのは、日本に割り箸を輸出して販売している会社だけです。圧倒的多数の飲食店やコンビニなどは、「売り物ではない割り箸」の仕入れがなくなるのでコストダウンし、経営への負荷が減ります。ぼくらの子孫たちも、豊かな森林から来る恵みを享受できます。割り箸輸出業者以外は、ありがたい話なのです。

こんなに簡単な手段で森林が守れるのです。「地球を守るためにマイ箸を持とう」などと、のんきなことを言っているうちは、「まだまだ将来の地球環境を真剣に考えていないな」と思われても仕方ありません。マイ箸推進派の人たちは、ぜひ「中国からの割り箸輸入禁止法案」の実現に向けて、政府を動かしてほしいものです。「マイ箸を持ち歩きましょう」と言っているだけでは、実質的にはほとんど効果がありません。

たとえるなら、今にも車が電柱に激突しそうなときに、「ブレーキはゆっくり踏みましょう」という、普通に運転しているときのセオリーを語っているようなものです。それはそれで正しいのですが、今そんなことをしていても電柱に激突するだけです。それよりも、急ブレーキをかけるなり、ハンドルを思いっきり切るなりしなければ、激突して死ぬだけです。

また、マイ箸推進派の人たちは、「なぜ割り箸というものが誕生したのか」ということを、ちゃんと理解していなければなりません。自分たちの運動の根っこを知らずして、その運動に説得力は生まれません。

割り箸は、もともと日本産でした。日本の林業が盛んな時代にたくさんの端材が出たので、これを割り箸に活用したのです。

植林するときは、隣の苗と密に接するように植えます。このほうが、木が大きく成長するのです。「自分の背が高くならないと、太陽の光が受けられなくなる」という危機感を、木が持つためです。ポツポツとまばらに植えますと、木が安心して成長が遅くなるのです。木の生存本能を利用した、林業独特の手法です。

木々がある程度成長してくると、密集してくるので、森全体(特に地面)に太陽の光が当たらなくなり、木の成育が悪くなります。そのため間引きをします。比較的成長の遅い木を伐採してしまい、木々の間隔を広げるのです。ここで、役に立たない端材(間引かれた木)が生まれます。

他にも枝打ちという作業があります。枝の間引きです。枝が成長して増え過ぎると、やはり日光が全体的に当たらなくなり、成長が阻害されます。そのため、枝を落としてあげるのです。落とされた枝が端材となります。

端材はこれだけにとどまりません。もともと丸い木材を、角材に加工しなければ商品になりません。円から四角を作るのですから、半月形の端材が生まれるのです。

間引き、枝打ち、角材加工によって生まれる端材の量は、森林全体の木材の体積から換算すると、なんと5分の4にもなります。逆にいえば、角材は森林資源の5分の1しか使っていないのです。「これはもったいない」ということで、端材から生まれた製品が割り箸でした。ですから、割り箸は日本の林業から生まれた、資源の有効利用製品だったのです。

そんな日本の割り箸文化に目をつけた中国から、安い割り箸が入ってきました。彼らの安い割り箸は、たちまち日本を席巻しました。コスト競争に勝てない日本の割り箸は、すたれました。

中国の割り箸は、端材から作られているのではありません。日本ならば住宅などの木材に使う部分までも、全部割り箸にして日本に出荷しているのです。角材にできる部分まで割り箸にするなんて、資源の無駄遣いです。要は、日本がどんどん買ってくれるから、どんどん伐採して、せっせと割り箸を加工しているというわけです。これによって、中国は砂漠化が進んでしまっています。中国産の割り箸こそ、環境破壊の元凶なのです。

日本の林業から出る端材は、行き場を失いました。間引きや枝打ちした木を山から下ろすだけで、コストがかかります。コストをかけて山から下ろしても買い手がつかないので、そのまま山に捨てるようになりました。山に残された端材は、洪水被害を起こすようになりました。山の表面を端材が覆っているため、雨が地面に浸透せず、端材ともに水が一気に河川に押し寄せるのです。中国産割り箸のおかげで、日本の環境まで破壊されたのです。

マイ箸推進運動もよいですが、中国産割り箸の輸入禁止を最優先に実現しなければ、環境破壊は止まりません。そして、日本の端材で割り箸作り再開することです。山に捨てておいたって、洪水を起こし、山を荒らすだけです。割り箸は使用後にゴミとして出されますが、自治体の焼却炉できれいに燃えますので安心です。

飲食店やコンビニなどでは中国産割り箸のコストでやりくりしていたのに、再び日本産の割り箸になったらコスト高になって、やっていけなくなるかもしれません。だったら、飲食店やコンビニなどではお客さんに割り箸を支給しなければいいでしょう。

代わりに、ぼくら消費者が日本産の割り箸を買って使えばいいのです。日本産の割り箸は丈夫で長持ちします。中国産のように1回か2回くらいしか使えないわけではなく、1ヶ月くらいは十分に使えます。中国産のものは、木材を乾かさないで加工してしまっているので、すぐ駄目になるのです。

普通の箸を作る工程よりも、割り箸を作る工程のほうが、はるかに単純です。それはつまり、普通の箸に比べて、割り箸は電力を使わないで作られていることを意味しています。電力の多くは、石油から生み出されています。普通の箸は、割り箸に比べて石油を多く使う「環境にやさしくない」製品なのです。

マイ箸ならぬ「日本産マイ割り箸」を普及させることのほうが、環境にやさしいことになります。間違っても、中国産のマイ箸や、日本産角材から作られたマイ箸などは持たないようにしましょう。石油を原料に作られているプラスチック製のマイ箸や、金属から作られている(加工にものすごく石油を使う)マイ箸などは、論外です。

環境にやさしいと思っているマイ箸でも、かえって環境に負荷を与えている場合があります。箸の原料や作業工程をよく調べてから買うようにしないと、赤っ恥をかくことになります。


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