家入レオさんがMVでコラボした「ジャングル大帝」を哲学する


シンガー・ソングライターの家入レオさんが、MV(ミュージックビデオ)で「ジャングル大帝」のキャラクターたちと共演するそうです。明日19日にリリースするアルバム「a boy」のMVだそうです。楽しみだなあ~。

原作「ジャングル大帝」の結末には泣きます

家入レオさんは、この「ジャングル大帝」の主人公「レオ」にちなんでアーティスト名を付けたのだそうです。

テレビアニメとしては日本で初めてのカラー作品となった「ジャングル大帝」は、手塚治虫さんの代表作の1つです。1965年にフジテレビで放送されました。ぼくが生まれて間もないころですから、リアルタイムで観たことはありません。でも、名作ですから何度も再放送されていましたので、何度も観た記憶があります。

主人公はレオというホワイトライオンの子供です。ジャングルの王様だった父が人間に殺されてしまって、母親とも生き別れ、レオは人間に拾われます。やがて成長して、ジャングルの王様になる物語です。1994年にディズニー映画「ライオン・キング」が上映されたときに、「ジャングル大帝のパクリじゃないか」と話題になりました(確かにストーリーが似ています)。

アニメも素晴らしいのですが、原作はもっと素晴らしいと思います。特にラストが泣けます。ラストでは、調査隊(人間)が次々と遭難していきます。レオは、ヒゲオヤジと呼ばれる人間を救うために、なんと自分を殺させるのです。ヒゲオヤジは、仕留めたレオの肉を食って生き残るという話です。

ぼくは、もし動物たちに意識があったとしたら、案外レオのような考え方をしているのではないかと思います。だって、人間は他のほとんどの動物をバクバクと食う奴らです。それなのに、文句の1つも言わず、暴動を起こすこともなく、ずっと人類の食糧として生きてきたのです。いわゆる自己犠牲の精神です。

人間がそういう境地に至るには、ものすごい修業が必要です。パニック映画などでは、自分の命を投げ出して他人を救うシーンが描かれることが多いですが、人間は心の底では自己犠牲を素晴らしいと思っているわけです。でも普段の生活ではできない。

それに比べると、動物は文句1つ言わず、人間のために食われることもいとわない。もしかしたら、精神的には動物たちのほうがハイレベルで、人間は一番下等な動物なのかもしれません。そんなことを思わされるのが、原作「ジャングル大帝」です。

ちなみにアニメ「ジャングル大帝」では、レオは食われずに生き残ります。まあ、子供がたくさん観るアニメですから、その結末のほうが良いと判断したのでしょうね。現代のアニメだったらそんな遠慮はしないでしょうが、当時(1965年)にはそう考えても不思議ではありません。

原作のほうが哲学的であったり、怖かったりするものです

手塚治虫さんのもう1つの代表作「鉄腕アトム」も、同じように自己犠牲で終わります。太陽の異常を食い止めるために、アトムが爆弾を抱えて太陽に突っ込んで溶けてしまうというラストです。これは初期の白黒アニメでは原作どおりのストーリーでしたが、その後リメイクされていくアニメは、やはりハッピーエンドに変わっています。

「ジャングル大帝」や「鉄腕アトム」のラストをみると、手塚治虫さんの哲学が何となく分かるように思いますね。

原作があって、それが次のメディアになって行く場合、このようなケースは結構あるものです。原作者って、たいてい1人であって(まあ、最近は共作もありますが、せいぜい2~3人)、孤独やら問題意識やら何やらを抱えながら、それを作品に表現しようとします。しかし、そうやって生み出された原作を、より多くの人に読んでもらおう、観てもらおうとしたときには、どうしても商業的な観点でリメイクすることになるのでしょう。

童話「赤ずきん」などは、その好例です。1967年にフランスでシャルル・ペローという人が出版したものです。このペロー童話の「赤ずきん」は、最後に赤ずきんが狼に食べられてお終いなのです。猟師が助けに来てくれません。赤ずきんとおばあさんが狼の腹から救出されるのは、その後のグリム童話になってからです。

しかも、ペローはスウェーデンの民話「黒い森の乙女」をリメイクして「赤ずきん」を書いたと言われていますが、この「黒い森の乙女」はもっと怖い。この民話では、赤ずきんはワインと干し肉を食べるのですが、これは狼が騙したのです。実は、ワインと干し肉として食べたものは、おばあさんの血と肉だったのです。

おお、こわ。民話って、何かを警告したりする目的で作られたのでしょうけれど、それにしても怖いですね。ホラー映画並みです。

家入レオさん、がんばれ!

話を戻して家入レオさんについてですが、ぼくは好きですね。もともと娘が好きだったのですが、歌を聴いてみたらすごくいい。歌詞がいいです。若い彼女が作詞しているのですが、とても深い歌詞です。「歌う哲学者」だと思います。特に好きなのが、「Shine」です。

彼女の生い立ちについてはあまり報じられていませんが、幼少期にご両親と離れて、親戚の家を転々としていた時期があったそうです。ご両親にどんな事情があったのかは分かりませんが、レオさんご本人はとても辛かったでしょう。そういう苦労があったから、今の活動につながっているのだと思います。

レオというアーティスト名が、両親と離れて苦労の道を歩む「ジャングル大帝」のレオにちなんだことも頷けます。ぜひ、レオのように頂点に立ってほしいです。


“家入レオさんがMVでコラボした「ジャングル大帝」を哲学する” への2件の返信

    • たけるさん。貴重な情報をありがとうございました。
      90秒バージョンの存在は知らなかったので、感謝です。
      早速、観に行きます!
      今後もよろしくお願いします。

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