熊本大地震と阿蘇山の噴火が、破局噴火につながらないことを祈ります


サイコロ
熊本大地震が現在進行中です。4月14日午後9時26分に起きたものが本震だと考えられていたら、実は前震で、15日午前1時25分が本震だということです。こうなると、これも本震なのかと疑いたくなります。まだ注意が必要です。

しかも、今度は15日午前8時30分に阿蘇山が噴火しました。

気象庁はこれまで、「阿蘇山周辺の火山活動は特段の変化はない」としていました。

前震を本震と判断したことといい、阿蘇山の火山活動を見抜けなかったことといい、気象庁にとっては残念な結果です。それを責めるつもりは毛頭ありません。それだけ自然現象を予測することは難しいということです。

ただ、今回の地震と阿蘇山の噴火が重なったのは、ぼくとしては少々心配です。今のところ、気象庁は「今回の噴火と一連の地震との関連性は不明だ」としています。不明なので、関連がある可能性もあるわけです。とても心配です。

東日本大震災で巨大地震と巨大津波に襲われた日本としては、自然災害はこれが最大だと思いたいものです。ところが、地球はそんなに甘くはありません。東日本大震災による地震や津波などは、地球がくしゃみをした程度のものです。もっと凄いものがあります。火山の「破局噴火」です。ぼくが心配するものはこれです。九州では、この破局噴火が起きる可能性があるからです。

破局噴火とは、地球上の生物を絶滅させてしまうほど巨大な噴火を言います。地球上では、過去5回、生物が大絶滅をしてきています。直近では、6500万年前に地球上を席巻していた恐竜が大絶滅しています。恐竜絶滅は巨大隕石の落下で生じた、という話は有名なのですが、実はこれはとどめの一撃でして、その前に火山が破局噴火していたわけです。

火山噴火の規模を表す火山爆発指数 (VEI) というものがありますが、破局噴火はVEI7~8のものを言います。ちなみにVEIは8が最大で、それ以上はありません。VEI7とVEI8では結構な差がありますから、7に近ければ地球上のすべての生物が絶滅するということはありません。それでも、噴火した周辺の生物は死に絶えます。

九州の中央から南部にある霧島火山帯は、世界の火山の中でも結構活発で、過去30万年間で4回も破局噴火を起こしています。このうち、もっとも最近は7300年前の鬼界カルデラで起きた破局噴火です。当時、南九州で栄えていた縄文文化を壊滅させたことは、考古学でも判明していることです。

ぼくらの年代ですと、雲仙普賢岳の噴火で、地元住民や警察官、報道関係者など43名が火砕流に飲み込まれて死亡した出来事を記憶していると思います。鬼界カルデラの破局噴火は、雲仙普賢岳の火砕流の40万倍だったことが分かっています。

40万倍ってどんな規模かと言いますと、九州の南半分は火砕流で覆い尽くされるという感じです。火砕流の高さは火口から離れるとだんだん低くなっていきますが、だいたい100~200mだそうです。移動速度は時速100kmくらい、温度は500℃くらいなのだそうです。こんなのに飲み込まれたら、即死です。

これくらいの規模になると、火砕流は全方位に流れていきます。普通の火砕流や土石流のイメージは、川のように一方向ですが、破局噴火の火砕流は360°に流れていくわけです。九州の半分が500℃で焼き尽くされたということです。鬼界カルデラは、薩摩半島から約50km南の大隅海峡にあります。つまり、火砕流は海を渡って行ったということです。いやはや、恐ろしい限りです。

同じ霧島火山帯の姶良カルデラは、2万9000年~2万6000年前に破局噴火しています。姶良カルデラは、鹿児島湾と桜島を囲む場所です。つまりは、鹿児島湾はこのときの噴火でできたのです。鹿児島湾はもともと陸地であって、そこが破局噴火したものだから全てが吹き飛んで、ゴッソリと穴が開いて海水が入ってきたわけです。

このような想像を絶する規模の噴火が、破局噴火というものです。今、仮にこの規模の噴火が霧島火山帯で起きたとすると、大阪でも火山灰が50cm、東京でも20cmは積もるということです。火山灰が積もった後、今度は雨によってそれが土石流になります。つまり、関東地方から九州までは、人が住むことが困難となります。日本の死者は数千万人レベルだと予測されています。

最近、富士山の噴火がどうのこうのと話題になっていますが、火山学の研究では霧島火山帯のほうが断然に噴火する確率は高いです。もちろん、いつ起きるかは分かりませんけど・・・。

霧島火山帯が破局噴火すると、被害は日本だけにとどまりません。北半球全体が、火山灰の影響で日光がさえぎられて、寒冷化します。小氷河期になるということです。緯度の高い所では多くの凍死者が出るでしょうし、作物ができませんから南半球に頼らざるを得ず、穀物価格は高騰し、金持ちしか食べ物が得られなくなります。餓死者も相当数になるでしょう。人類絶滅とまではいきませんが、半数か、3分の2くらいはいなくなると考えられています。

むろん、日本の1つの火山が破局噴火しただけでこの程度ですから、他の国でもいくつかの破局噴火が起きたら、人類は絶滅してしまうでしょう。これほどまでに、火山というのは脅威なのです。

ひとたび火山が噴火すると、このように壊滅的な被害を受けるために、昔の人々は「火山噴火は神の怒り」と考えていた可能性は大きいです。ですから、世界の神話や宗教書なども、実は破局噴火の恐ろしさを伝えるために書かれたのではないか、という説まであります。

日本の古事記のイザナミも火山を象徴していると考えると、納得する記述が多いとのこと。英語で火山をボルケーノ(volcano)といいますが、これはギリシア神話に出てくる火の神・ヘーパイストスに由来しています。

『旧約聖書』に出てくるソドムとゴモラの町の壊滅の物語も、火山噴火によるものだと考えられています。

主は硫黄と火とを主の所すなわち天からソドムとゴモラの上に降らせて、これらの町と、すべての低地と、その町々のすべての住民と、その地にはえている物を、ことごとく滅ぼされた。しかしロトの妻はうしろを顧みたので塩の柱になった。(『旧約聖書』創世記19:24-26)

ロトの妻が後ろを振り返って塩の柱になったということも、火砕流から逃れるために全速力で走らなければならないのに、立ち止まってしまったからだといいます。火砕流は500°という高温なので、それに飲み込まれた人間は一瞬で粉々に爆発してしまいます。人体の水分が急激に熱せられて、水蒸気爆発を起こすのです。塩のように粉々になったということでしょう。

では、このような破局噴火は、いつ起きるのでしょうか? 残念ながら現代の科学では予測できません。しかし、5回の大量絶滅は約1億年周期で起きていることから、直近の恐竜絶滅が6500万年前ということを考え、「いつ起きてもおかしくない」という意見は、どの科学者にも共通しています。

自然はぼくらを簡単に絶滅させる力を持っています。自然がその力を行使したら、人類なんて一瞬で「塩の柱」だということです。そういう自然が、私たちを生かしてくださっていることは、大いなる感謝です。自然が、その力を破局的な方向に行使しないこと願うばかりです。


“熊本大地震と阿蘇山の噴火が、破局噴火につながらないことを祈ります” への5件の返信

  1. いつも楽しい記事をありがとうございます。

    今回の熊本地震は大変ですね。いつもよりも長く続いいているようです。

    ところで、聖書・創世記には
    「・・・・神はよしとされた・・・・」
    という記述があり、天地の創造を終えて人(アダム)を創造されたと
    記されています。

    となると、火山活動なども一通りの活動を終了して、完成形としての
    地上が出来上がったと考えていましたが、「破局噴火」などはまだまた
    継続するのでしょうか。

    確かに、「形あるものはいずれ変化する」という事からすれば、地形の
    変化も当然であり、変化するために「火山活動」もありなのかな・・
    と考えられますが。

    ニュースでは「専門家」の方々が色々なコメントを披露されますが、
    「リスクゼロ」等はあり得ないお話で、聞いていても「結局何が言いたい」
    のか良くわからない時が多いです。

    自然相手ではありますが、一日も早く、普通の日常に戻ることを
    祈るばかりですね。

    • ぼくの考えでは、そもそも自然災害というのは、そこに人が住んでいたり、人が使用する施設などがあるから「災害」というのであって、そういうものがなければ単なる「自然現象」となるということです。

      つまり、人がもっと自然現象を的確に予測できるようになれば、事前にその現象を避けることができるわけです。そうなってこそ「人の完成形」と言えるのではないでしょうか。

      そういう意味では、人はまだ未完成といえますから、自然に対して傲慢にならず、もっともっと謙虚にするべきだと思います。太刀打ちできないものに無理に挑まず、逃げるときは早く逃げるべきでしょう。

      • ご回答ありがとうございます。

        確かにそうですね。
        地形的に危険な場所は避けることが人に知恵ですね。

        ある番組でタモリ氏が美しい富士山を見ながら、
        ちょうど一番美しい富士山になっているときに、生きて
        見ることできるなんて本当にラッキーだ・・・みたいな事を
        言われていました。そのことを思い出しました。

  2. ピンバック: モーセの奇跡を科学的に考えると、火山噴火の恐ろしさが見えてくる – ∂世界/∂x = 感動

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