KPIが人事評価の指標であると思っている組織の幹部に唖然


会議室
息子が所属しているボラティア系団体で父母会議があるというので参加してみました。ぼくは以前、社長をしていましたので、会議ばかりの日々でした。ですから、もう会議には出たくはないのですが、昨年あんなことこんなことがあったので、一度どんな会議をしているのか見てみたいと思ったのです。

参加したら、予想どおり。会議になっていませんでした。偉い人たちが順番で報告するだけ。何かを話し合うという空気感はゼロでした。そもそも、会議の目的すらない状態。父母に学生会組織の現状や方向性を説明するだけ。だったら、プリントなりウェブサイトで報告してくれたら済む話です。

会社は営利組織なので会議の目的も「利益の創出」と明確です。むろん、細かくはいろいろな目的の会議をするのですが、利益を上げないと会社がつぶれてしまいますので、どんな会議でも最終的な目的は利益の創出なのです。それが大前提にあって会議があります。目的が明確だから、会議はサクサク進むのです。

会社でも、サクサク進まない会議もあるかもしれませんが、それは「利益の創出」という目的を忘れて、枝葉末節な議論をしてしまうから生じるものです。その目的に立ち返れば、サクサク進み始めます。

ボラティア系団体などのような非営利組織は、存在目的自体が会社のように明確ではありません。失礼。もちろん、世のため人のためとか、崇高な存在目的を掲げています。でも、それって利益のように数値化できません。数値化できないと、人によって実現度の理解もまちまちになります。結果として、その組織が本来目指している方向と、全く違うことをするような人も出てしまいやすいです。

公務員などを見ていたら分かりやすいです。県民、市民のために存在しているのに、自分たちの天下り先をせっせとつくるようになってしまいます。公僕という崇高な存在目的は、どこへやらです。

会議と称するものは、多くの人を集めるのですから、多くの脳みそを使いこなすべきです。少数の偉い人の脳みそよりも、圧倒的に多い脳みそで考えれば、素晴らしい戦略、戦術が生まれるものです。そういう会議をやったことがない人って、不幸だと思います。

てなわけで、その会議の途中で手を挙げて、意見を述べてみました。

「その戦略が実現できるかどうか、どうやってチェックしていくですか」

「あ、え、う・・・」

「PDCAサイクルってご存じですか」

「ええと、あれですね」

「(心の声:こりゃ知らんな) ちゃんとKPIを取ってチェックしていかないと、絶対にうまくいきませんよ。KPIはどんなものを設定していますか」

すると、上座のお偉いさん方の顔がぴくっと引きつりました。そして互いに顔を見合わせていました。KPIという言葉は、よく知っているような反応でした。

KPIとはKey Performance Indicators(重要業績評価指標)の略で、立てた戦略が成功していくためにモニタリングしていく数値です。それを毎週なり毎月なりチェックしていくことで、全体的な戦略が成功していくようにしていくわけです。いくつものKPIを設定していきます。

例えば、利益の創出を目指す会社では、「利益 = 売上 – 経費」ですから、売上に関するKPI、経費に関するKPIは必須です。ぼくが社長していた会社は、社員が40人、年商8億円でしたが、その規模の会社でもKPIは20個ほどありました。

飛行機のコックピットのようなものです。コックピットではいろんな計器をチェックしながら飛行します。KPIがない組織運営なんて、コックピットの計器が全部止まってしまって、パイロットの勘だけで飛ぶようなものです。とても無謀です。

さすがに、世のため人のためを標榜する大きなボランティア系団体だけあって、KPIは設定して組織運営しているようでした。しかし、次の言葉に唖然としました。

「KPIは、人事異動に用いるものでして、学生部の運営には関係ないかと・・・」

大勢の人が居る会議の場で間違いを指摘しては、偉い人に恥をかかせてしまうので、取りあえずそこは生返事で終わりにしておきました。会議後に、その幹部をつかまえて確認したところ、その組織ではKPIが悪い部署の人を人事異動の対象にしているとのこと。

つまり、KPIが「戦略の成功のために用いる指標」という本来の目的に使われていないのでした。非営利組織なので、会社のように「売上実績が悪い営業部員を他部署に移動する」というような数値で管理することができません。そんなところに、組織運営のツールとして、戦略の実現度を数値で示してくれるKPIが入ってきたものだから、人事評価に使い出したのでしょう。

いやはや、困ったものです。これで世のため人のために何かできるのかなあ。こんな組織に属している息子が心配な、きょうこのごろです。

(注)もちろんKPIを人事評価に用いてもいいのですが、KPIの主たる目的は組織全体の戦略実現であって、構成員の点数計算ではありません。


“KPIが人事評価の指標であると思っている組織の幹部に唖然” への2件の返信

  1. 奉仕精神の人達が集った慈善団体なのに、KPIを主に人事管理として評価基準にしていたら、モチベーションが上がらないでしょうね。
    ボランティアとして自主的に志願した集団なら、敢えてそんな部分に使う趣旨が解りません。
    それより活動効率や運営状況など、チェック項目は沢山あるはずなのに・・・・
    ここの偉い人たちは何を考えているのでしょう?

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