中傷される被害者側に立った整備を、ネット業界に求めます


ぼくが好きな人気ブロガー・イケダハヤトさんのサイト「イケハヤ書店」において、ツイッターで他人を中傷した男性のIPアドレスが開示された(仮処分)というニュースを知りました。イケダさん自身も同じように心無い中傷に悩んできたそうで、訴訟へ向けて動き出すような発言をしていました。

かなりの中傷をされないと、犯人の情報を開示してくれません

キーボード

実はぼくも、そのような中傷に苦しんできた1人です。このブログをスタートする前、やはり粘着質な人に絡まれ、あることないこと書かれました。そして、やはりぼくも「泣き寝入りは良くない」と考える性格だったので、行動を起こしました。

イケダさんのコメントでは、

「この詐欺師!」「自己中ぶさいく」というもの。この水準で開示請求できるというのはけっこう驚き。

と書かれていましたが、確かにそうです。ぼくが最初に行動したときも、その水準だったので開示されませんでした。

ぼくの場合は、犯人(と言っておきます)に無料レンタルブログで中傷記事を書かれました。そこで、そのブログの提供会社(具体名は控えます)にIPアドレスの開示請求をしました。予想はしていましたが、定型文で「開示できません、捜査機関や裁判所の要請があれば協力します」と軽くあしらわれました。

むろん、警察に行ってもその程度では動いてもらえませんでした。市でやっている無料の法律相談で弁護士さんにも相談しましたが、こういう事案に詳しい人ではなかったので、役に立ちませんでした。

犯人には、ブログのメッセージ機能を通じて、「裁判に訴えるから、住所・氏名を教えてくれ」と送っておきました。むろん回答を期待しませんでしたし、実際に回答は来ませんでした。しかし、その後、中傷が止んだので、「ぼくが本気で怒っていることが分かったようだ」と、ひと安心しました。

今の制度ですと、3回の裁判が必要です

ミニチュアの町

ところがそれは大きな間違いでした。犯人は逆ギレしたらしく、ぼくの住所を調べて、それも公開して中傷を始めたのです。「なぜ住所が分かるのだ」と驚きましたが、当時は会社の社長でしたので、法人登記簿を閲覧すれば分かってしまったのです(法人登記簿には、代取の住所を記載するようになっているため)。

住所まで晒されては、家族に危害が加えられるかもしれません。そこで再度、警察に行きましたが、実害(殴られたとか、脅迫されたとか)がないので動けないという答え。「住所をネットで公開するのはプライバシーの侵害ではないか」と言いましたが、「法人登記簿に掲載されている公開情報なので、それは該当しませんねえ」と言われて終わりです。

刑事事件で動いてくれないのなら、民事でやるしかありません。ネット事案に詳しい弁護士さんを探して、とことん戦うことにしました。しかし、道のりは長かったです。裁判を3回もしました。

まず、無料ブログ提供会社さんを訴えて、犯人のIPアドレスを開示させる裁判。住所まで晒して中傷していますから(刑事事件にはならないにしても)、民事としては悪質だと判断され、提供会社さんに開示命令が出ました。

しかし、それで終わりではありません。そこでは犯人のIPアドレスが分かっただけなのです。今度は、そのIPアドレスから、犯人が使っているプロバイダーを訴えて、契約者(すなわち犯人)の住所・氏名を開示させる裁判です。すでに記事の悪質性は認められていますので、開示されました。

それでやっと、犯人を訴える裁判というわけです。具体的には、「損害賠償と、中傷記事をすべて削除しろ」という訴えです。すでに記事の悪質性は認められていますので、要求は認められました。でも、賠償金はもらえても、ほとんど弁護士費用で消えて、儲けなんてないです。

弁護士費用はどのくらいかかるのかと言いますと、もちろん弁護士さんによってまちまちでしょうが、ぼくの場合は1つの裁判で30万円。ですから3つ裁判だから90万円です。「最低限、その金額は払えよな」という要求をし、裁判所に認められたということです。

しかし、1つの裁判で約1年かかります。裁判って結構、時間がかかるのです。1か月に1回しか公判をしないですからね。ですから、ぼくは、こんなことに3年費やしたわけです。裁判には、時間もお金も、そして根気や労力も、かかるということです。

被害者が泣き寝入りしない仕組みを作ってください

青空と雲

こういう体験をしたぼくが思うことは、「今後は、最初の2つの裁判は必要ない仕組みにしてほしい」というものです。そうしませんと、被害者が貴重な時間やお金を使って苦労することになります。加害者の権利を云々するより、被害者側に立った整備をしてほしいのです。

ネットでは臆病者が匿名で悪さをしますから、訴えたい犯人がどこの誰か分かりません。ですから、まず、どこの誰かを証明することが、被害者に求められるのです。これがきついです。立証責任は訴える側にあるから、現行制度では仕方ないわけです。ここを変えてほしいです。

そのためには、ブログやツイッターなどのサービスを提供する会社が、被害者からの訴えがあったら警察だの裁判だのとグズグズ言わず、すぐにIPアドレスを開示してほしいです。IPアドレスだけでは住所も氏名も分かりませんから、提供会社がプライバシーの侵害に問われることはないはずです。

次に、IPアドレスを提供しているプロバイダーが、被害者からの訴えがあったとき、迅速に契約者を開示してくれること。これは、もし契約者が悪くなかった場合には、プライバシーの侵害になるから慎重にならざるを得ないでしょう。でも、書き込みなどを読めば、酷いかどうかくらい分かるでしょう。あまりにも酷いものは、裁判所命令を待たず、さっさと開示してほしいです。

この2つの情報開示が裁判なしでできれば、泣き寝入りはグッと減ると思います。それでも30万円くらいはかかるのですが、90万円かけたぼくですら元がとれたのですから、裁判が1回で済むならばおつりがきて、名実共に慰謝料になるでしょう。

もちろん、弁護士さんを頼まずに、自分で訴訟を起こすこともできます。時間がある人は、個人で訴訟を起こすことも一案です。

経験者からのアドバイスとしては、個人でやるにしろ弁護士に頼むにしろ、立証責任は被害者本人にあるということに尽きます。「本当にこの人がやったのか、なぜこの記述は名誉毀損なのか」ということを、自分で立証するということです。

犯人も裁判所も、その立証はしてくれません。否、弁護士さんだって赤の他人なので、自分のように憤慨しているわけではありませんから、よく分かってもらわなければなりません。そういう面では、誰もが納得する説明を求められるのが、実は原告の立場なのです。結構たいへんです。


“中傷される被害者側に立った整備を、ネット業界に求めます” への1件の返信

  1. ピンバック: 公人は覚悟をしてください | ∂世界/∂x = 感動

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

*