最も自由を尊重すべき組織で生じる不自由な現実



東京新聞の長谷川幸洋氏が、3月1日付で論説副主幹を外される人事異動が発表されました。同社では「定期異動の一環」と言っているようですが、懲罰人事なのではないかと騒がれています。

懲罰人事?東京新聞、ニュース女子に出た長谷川幸洋氏を今月で論説副主幹から論説委員に異動

沖縄の基地問題を取り上げたニュース女子の司会を努めていた東京新聞論説副主幹の長谷川幸洋氏が、今月いっぱいで論説委員へと降格される人事が発表されたようだ。
ネット民はこれを懲罰人事とみて東京新聞を発行する中日新聞社を批判している。
事実、のりこえねっとから長谷川氏の謝罪がない場合は解任するよう要求があったようだ。

「ニュース女子」というのは東京MXテレビの番組で、長谷川氏は司会を務めています。その番組で沖縄の基地問題を取り上げた際、基地反対運動をしている人々の多くが実は沖縄県民ではなく、他県からお金を支給されて動員されている(要はアルバイト、仕事としてやっている)という報道をしたというのです。「のりこえねっと」という団体が、その動員をしており、お金を支給しているという証拠のチラシもテレビで流されました。

本当にお金を支給して反対活動をやっているとしたら、とても嫌な感じがします。ただし事の真偽は、ぼくには分かりませんので、それについてはコメントしません。話題にしたいのは、言論の自由についてです。

要は、長谷川氏は基地反対運動に懐疑的な発言したのですが、彼が所属する東京新聞は反対の立場(つまり基地反対運動を応援するような立場)に立っていたということです。一新聞社の組織人として、組織の主張に反対する発言をテレビ番組でしたものだから、東京新聞は社説を使ってまで「反省」したというわけです。

東京新聞「『ニュース女子』問題 深く反省」と朝刊1面で掲載 論説副主幹司会の東京MXテレビ番組

「その内容が本紙のこれまでの報道姿勢および社説の主張と異なることはまず明言しておかなくてはなりません」と指摘。
(中略)
「他メディアで起きたことではあっても責任と反省を深く感じています。とりわけ副主幹が出演していたことについては重く受け止め、対処します」とした。

「対処します」と社説で発表していて、今回の人事ですから、「定期異動の一環」というのはどうかなあと思うのが普通でしょう。

当の長谷川氏は、これは憲法で保障された言論の自由を踏みにじる行為だと反論しています。

東京新聞の論説主幹と私が話し合ったこと 「事なかれ主義」を強く憂慮する

結局、反対運動に対する見方の違い、東京新聞の報道姿勢と社説の主張にそぐわない番組だったことが私の処分につながっている。私が所属する新聞と異なる意見を社の内外で発表しても、いっこうに問題はない。それは言論の自由そのものだ。私はかねてから東京新聞と異なる主張をしてきた。

意見が新聞と異なるのを理由に私を処分するのは、言論の自由に反する。こんなことを許すわけにはいかない。

確かに、長谷川氏の言い分のほうが正論だと思います。しかも新聞社は、そもそも言論で食っているのだから、誰よりも言論の自由を尊重すべき組織のはずです。その組織が、組織の構成員の言論の自由を、社説や人事でもって封じ込めようとしたら、本末転倒でしょう。東京新聞の今後が心配です。

ただし組織としては、長谷川氏の行動は大変困るということも十分理解できます。組織の方針に反する構成員は、その組織から何らかのペナルティーを受けることも一般常識です。例えば今回の例でいえば、長谷川氏は東京新聞からお給料を頂いているんですから、会社の方針に従うべきだということも言えます。「そんなに言論の自由を行使したいなら、東京新聞を辞めて語ればいいじゃないか」というのが、東京新聞の偽らざる気持ちでしょう。

それでも、言論の自由を尊重すべき組織の新聞社なのですから、もっと熟考したほうがよかったように感じます。

似たような騒動は、宗教団体でもよく起きます。その団体の教義の解釈とは異なることを言いだす信者がいて、騒動になることがよくあります。やはり、憲法で保障された信教の自由を行使しているのが宗教団体なのですから、そこの信者が何を信じたってその「信教の自由」を尊重してあればいいものを、処分だ何だとやるので、結局分派していきます。

こう考えると、最も自由を尊重すべき組織では、不自由な現実があるのだなあと痛感します。自由って結構難しいものですね。


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