できちゃた結婚で生まれた子どもの本当の父親が分かってしまうDNA鑑定の仕組み


前回はDNAの話題に触れましたので、今回は犯罪捜査にしばしば用いられるDNA鑑定について解説したいと思います。

ひと口にDNA鑑定と言っても、実は何種類もの検査方法があります。代表的なものとしては、MLP法、STR法、SLP法、ミトコンドリア法、Y染色体STR法などが上げられます。全てを説明していると大変ですので、DNA鑑定の基礎を築いたMLP法について記します。

MLP法とは、1985年にイギリスの遺伝学者アレック・ジェフリーズ博士が発表したものです。別名DNAフィンガープリント法と呼ばれます。フィンガープリントを和訳すれば指紋です。ですからDNA指紋法とも呼ばれています。

指紋が個人を特定する有力な情報となるように、DNAの「ある部分」も同様の有力情報となることが分かったのです。

その「ある部分」とは、遺伝子以外の部分(全DNAの98%の部分)に存在するミニサテライトと呼ばれる領域です。

ミニサテライトとは、同じ塩基配列(分子の並び方と思えばよいです)が何十回、何百回も繰り返している「へんてこりんな部分」をいいます。この繰り返し回数が、個々人によってまったく異なっていることが分かったのです。ですから、指紋と同じように個人を特定する有力な情報となるわけです。

MLP法(DNA指紋法)の検査方法は、次のようなものです。

DNA抽出液を使って、細胞からDNAを取り出します。取り出したDNAから、ミニサテライトを切り取ります。切り取るために使うものは、制限酵素と呼ばれるものです。

切り取ったミニサテライトを、透明なゼリー状のゲルと呼ばれるものに入れます。このゲルに電気を通しますと、-極から+極の方向へミニサテライトが移動を始めます。電気の刺激によって泳いでいるように見えるので、この移動現象を電気泳動といいます。

これは、ミニサテライトが電気的にマイナスに荷電しているために起きるものです。最終的には等電点(荷電がなくなる場所)まで移動して、止まります。

電気泳動は、軽いものほどたくさん移動し、重いものはあまり移動しない特性があります。

繰り返し回数が多いミニサテライトは、「分子の数が多い」ということですから、重いということになります。重たいので、あまり遠くまで移動できません。

繰り返し回数が少ないミニサテライトは分子の数が少ないということですから、軽いということになります。軽いので、遠くまで移動します。

DNAの中に存在するいくつものミニサテライトを全部取り出して、同じゲル内で検査します。それぞれの重さによって移動距離が異なるため、縞模様ができます。この縞模様が、指紋のように個々人に固有のパターンとなるわけです。

(DNA指紋の実例)

このようにMLP法(DNA指紋法)とは、DNAの特徴を縞模様として視覚的に確認できるようにした、画期的な検査法です。

犯罪現場にDNAが取り出せる犯人の遺留物が残されていれば、容疑者のDNAと比較して「犯人であるか否か」を確実に判定できるようになりました。

この方法を用いると、親子鑑定も一目瞭然に行えます。

画像父親と母親はもともと赤の他人ですから、ミニサテライトの繰り返し回数は異なっています。遺伝の法則によって、子どもは父母からDNAを半分ずつ受け継いでいます。従って、子どものDNA指紋の半分ずつを有している男女こそ、父親と母親ということになります。左図では、母親が分かっていて父親の候補が2人いるケースの鑑定例を示しました。一目瞭然でB氏が父親だと分かります。

最近では、性倫理が乱れている世相を反映してか、親子鑑定が大きなビジネスになっています。相場は、比較的精度の良い鑑定でも1回の費用が7万円程度で、1週間もあれば結果が出るようになっています。もちろん、Amazonのお急ぎ便みたいな感じで、割増料金を払えば3日後に結果が出るというオプションなんかもあります。

「できちゃた結婚をして生まれてきた子どもの親子鑑定をしたら、自分の子どもではありませんでした。離婚できるでしょうか」という男性からの相談が、弁護士さんの方にも増えているそうです。7万円もかけてこの結果では、悲しい世の中です・・・。

DNA鑑定の生みの親であるジェフリーズ博士も、こんなくだらないことに技術が使われるとは、思ってもいなかったでしょうね。(^_^;


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