数学者のペンローズは、数学を用いて脳と心が別のものであることを示しました。もう一人、自らの専門分野を駆使して、脳と心が別のものであることを示した人物がいます。カナダの脳外科医、ワイルダー・ペンフィールドです。
ペンフィールドは、てんかんという病気の治療のため、脳の研究を行っていました。てんかんとは、脳の一部に異常な放電が起こることによって、体がけいれんする病気です。この病気は、放電を起こす部分を取り除くことによって、治療できることが分かっていました。そこでペンフィールドは、脳の一部に電流を流すことで、放電する位置を突き止め、治療して行ったのです。
同時に彼は、脳のさまざまな個所に電流を流すことによって、どの部分がどんな働きを担っているのかを示す、詳細な地図を作成しました(下図)。この研究が彼を世界的に有名にしたのです。

脳も物質である以上、脳内の全ての現象は物理学の法則に従っているはずです。つまり、心が脳によって生み出されているとすれば、脳に電気などの物理的な刺激を与えることで心を支配できるはずです。ところが、ペンフィールドが40年にわたって行った実験では、脳への電気的刺激で、心に影響を与えることは1度もできなかったのです。

例えば上図のように、解釈領という部分に電気的刺激を与えると、患者は過去の出来事を体験しました。それは夢のようなものではなく、過去そのものの忠実な再現でした。ビデオテープを再生するように、同じ刺激を与えれば何度も同じ場面を体験するのです。ところがその患者は実験の最中に、今、過去の体験をしていることと、実験のため手術室にいることとを明確に区別し、ペンフィールドに話すことができたのです。
また、ある患者は、運動領という部分を刺激されたことで、右手を動かしました。しかし、自分ではなくペンフィールドが動かしたのだと語り、動く右手を左手で止めようとさえしたのです。
つまり、脳に電流を流されたことによって生じた情報と、自分の目や耳などの感覚器官を通じて脳に伝えられた情報を、患者は混乱することなく明確に区別し、なおかつ、その2つの事柄について議論することができたわけです。
このことを説明するには、脳内の全ての情報を集め判断し、その結果、話したり手を動かしたりできる管制塔のような個所がなければなりません。これは、前述した結び付け問題の、極めて高度な部類に属します。
脳内の全ての神経が、最終的に集っているのは上部脳幹と呼ばれる部分です。しかし上部脳幹も、単に無数の神経が詰まっているだけなのです。機械にたとえれば、電線がギッシリ詰まっているような所です。とても何かを判断したり、考えたりする組織ではありません。つまり、脳にはそれぞれの部分において、それぞれの役割があるのですが、それらを統括する管制塔は存在しないことが分かったのです。
このことからペンフィールドは、空間的性質のない心が脳とは別に存在し、脳内の全ての神経が集まっている上部脳幹を通じて、脳に働き掛けていると考えるに至ったのです。
たとえるなら、脳は非常に優秀なコンピューターであり、心はそれを利用するプログラマーであるということです。プログラマーがコンピューターを使って目的を果たすように、心も脳を使ってさまざまな目的を果たしているというのが、ペンフィールドの主張なのです。
いよいよ、心 まで来ましたね。
こころ と たましい(と言われる) は 別物でしょうか。
番外編として、今話題の コロナウイルス についての
コメントをお聞きしたいです。
「たましい」となると、定義が曖昧で科学的に論ずるのは難しいかもしれません。
話題のCOVID-19(新型コロナウイルス)については、そもそも学術的にはほとんど解明されていませんので、何とも言えません。個人的には「騒ぎ過ぎ」だと感じていますが、まだよく研究されていないので、警戒が必要だということも分からないでもありません。
問題はCOVID-19そのものによる病気よりも、風評による経済的な打撃のほうだと思っています。リーマンショック以上になるといわれていますし、東京オリンピックも延期の可能性が高くなっています。