残業が責任感のバロメーターではない


読売新聞が「残業頑張っても評価変わらず…社員と認識にずれ」と報じました。厳密にいうと「時間内に仕事を終えて帰宅することを会社は評価する」という調査結果が正しく、読売の記事は少々ミスリーディングのようです。でも、社員の方は残業を一生懸命にやっていることが会社のためになっていると思っているのに、必ずしも会社が評価していないことは間違いないわけです。社員の皆様にとっては、ちょっとショッキングだったかもしれません。

期限を守るのは当然

社員たち
ぼくも数十人規模の会社を切り盛りしていた社長だったので、この調査結果はしごくもっともだと感じます。経営側は、効率よく成果を上げてほしいからです。同じ仕事をするのならば、就業時間内に仕上げてもらった方が、経営者はうれしいのです。

もちろん、期限が決まっている仕事を終えてもいないのに、定時でさっさと帰ってしまう社員は論外です。就業時間が過ぎたからといって、成し遂げるべき内容は放棄できません。どうしても定時で終わらなければ、残業することは当たり前の話です。

能力の差もありますから、同じ仕事でも定時で完了できる人もいれば、残業しなくては完了できない人もいるでしょう。会社がどちらを評価するかといえば、当然前者となります。

「責任感という点では後者も評価されるべきだ」という意見は、ごもっともです。ちゃんと会社も評価しているはずです。でも、前者の定時で完了できる人は責任感がないかといえば、そんなこともありません。つまり、残業が責任感のバロメーターになるわけでもないわけです。そこら辺は勘違いしない方がよろしいです。

公的な意識が大切

青空と社員
社長経験者から言わせていただくと、社員は公私の区別が曖昧だということです。著しい公私混同というわけではありませんが、少なくとも経営者よりも公的意識は薄いようです。これは立場の違いだから、致し方ない面もあります。

残業ということは、会社の水道光熱費を余計に使うということです。夏は冷房、冬は暖房をある意味使いたい放題です。家に帰ってもやることがない独身者などは、会社に長時間いた方が家計の節約になるので、だらだら残業する者もなきにしもあらずです。

結婚して家族がいるのに残業ばかりしている人も、ぼくは心配でした。「こいつ、家族とうまくいってないんじゃないか。家庭に居場所がないんじゃないか」と思ってしまい、その人をあまりよく評価していませんでした。

仕事の基本は、決められた期限で決められた成果を出す、ということです。どんな会社でも就業時間が決められているのですから、それを守って実績を収めることが基本中の基本です。当然、そのような社員が評価されるべきです。

ですから、期限内にできる人がいるのにもかかわらず(つまり、人間の能力の限界を超えていないのにもかかわらず)、期限内に終えることができずに残業している社員は、どうしても低い評価になります。

おまけに残業手当も支給しなくてはならないのですから、経営者は決してよい思いを抱きません。「期限内に仕事をできないで、会社の経費を余計に使っているやつに、割増賃金まで払うのかよ~」と思うわけです。それよりも、期限内に仕事を終える社員にお金を払いたくなる、昇進させたくなる、という経営者心理は、ちょっと考えれば分かると思います。

重ねて申しますが、残業の全てが悪いわけではありません。しかし、「残業をするということは、会社の経費をその分多く使い、かつ割増賃金までいただいているのだ」という認識は、全ての社員がもっているべきだと思います。

「自分個人の頑張り」という私的な意識ばかりが先行する社員よりも、「会社全体の経費や売上を考える」という公的な意識に立つことができる社員こそ、結果的にはその会社を背負う幹部になっていくと思います。


“残業が責任感のバロメーターではない” への2件の返信

  1. 初めまして。「小保方さん」でこのブログに出会い拝見させていただいています。今回の「残業」については「耳が痛い話」ですね。確かに時間内に仕事を終わらせることが普通だと思います。ただ、私は営業職なので昼間は訪問を続け「書類」は帰社してから作成することが状態化しています。残業をなくすために、週に1日から1日半は社内にいて書類の作成をするように計画した時期もありました。しかし、「お客様都合」でそのようにもいかず、結局残業はかわりません。また、「派遣」の身であり残業しなければ「生活」に支障をきたすことも事実です。ボーナスもありませんし、残業しなければ大卒の初任給程度にしかなりません。無理に残業しているわけではありません。 営業にとって必要な資料や企画書を作ろうと思えば、まだまだ足りないくらいです。ただ、「残業をしているから良い社員だ」という事はないですね。時間内に完了することをめざして私も仕事をしているつもりですから。

    • コメントをありがとうございます。おっしゃるように、雇用側にも問題はあると思います。残業しないと終えることができない雇用形態、給与体系というものは、雇用側が改善しなければなりませんね。

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