シンクロニシティーの功罪


ピラミッド
分析心理学の祖といわれるユングは、フロイトと共に現代思想界に大きな影響を与えた人物です。彼が唱えた概念にシンクロニシティー(共時性)というものがあります。

ユングは、患者が「夢でエジプトの黄金虫を見た」という話をした瞬間、窓から黄金虫が飛び込んでくるという体験をしました。

このような意味のある出来事が起きるのは、単なる偶然ではなく、「意味のある偶然の一致」だとユングは考えました。その背景には、因果関係ではなくシンクロニシティーという原理があるとしたのです。因果関係が全くない時空を越えた両者に、意味がある同様の現象が起きるというのです。

このシンクロニシティーは、超常現象肯定派が最もよく用いる話です。

では、科学的にはどうなのか? むろん、証明された科学的理論ではありません。客観性にも実証性にも欠けている部分が多いです。

科学的に考えたときの「シンクロニシティーの誤り」は、「意味がある」ということと「偶然の一致」を結びつけた点です。なぜなら、「意味があるかないか」と判断するのは「人間の主観」だからです。同じ現象であっても、ある人にとっては意味があることが、ある人にとっては意味がないということもあるからです。これでは客観性がありません。

しかし、逆にそれがユング心理学の最大の功績でした。すなわち、「単なる偶然の一致に人間が意味を付けてしまうこと」を発見したからです。精神疾患を治療する現場では、体験に意味を付けることが有効なのです。ですからユング心理学は、心理学としては十分に成立し、大きな学派となっています。

このように、科学的ではないものでも、人々の役に立つものはたくさんあります。科学は絶対ではありません。

ただし、何度も言いますが、科学的ではないものを「科学的だと偽装する行為」はやめてほしいです。科学への信頼を裏切る行為となります。シンクロニシティーは、超常現象を証明する科学理論ではありません。臨床心理学の現場で活用できるツールに過ぎません。

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